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Spica
ハミングバード






「おい、有紀彩」





多分私はこの時、油断しきっていたんだと思う。





「え?」





人間気付いたときにはすでに遅いというけど、その通りだと思う。





「俺の…」





私は目の前の男を前に、唾を飲んだ。





















「俺の寝床を奪うなぁぁああ!!」

「うるさいなー…私だって眠いんだもん」


私がこの学園に着てから約一ヶ月が経とうとしている。

月日というものは随分早いもので…。


今、私の目の前にいる男は私が授業をサボるのにいい場所がないかと探していたときに会った男だ。


「でもここは俺の場所だ!どけ!」

「嫌だ、ここ一番きもちいんだもん」

「でも俺が教えてやったんだろ、どけって」

「…うえーい」


哉太は持病持ちらしい。三分暴れると倒れるらしい。

過去に喧嘩になったとき、確かにそうだった。

私はここで倒れられても面倒だと思い、仕方なく場所を譲る。


でも、哉太とこうして授業をサボるのは嫌いじゃない。

むしろ好きだ。たまに煩いけど、安心するし。



「つーかさぁ…お前転校してきたばかりなのに大丈夫なのかよ」

暫くして、哉太の口から言葉が繋がれる。

「んー…大丈夫、神話とか以外は」

「それって英語とかじゃねーか」

「うん」

そう答えると、隣から少し大きな笑い声が聞こえた。

「そういう哉太は?」

「…俺は、まぁ…うん」

「そっか」

少し隣から変なオーラを感じる。ま、大人しくなったからいいか。


「それにしても気持ちいねー…」

「そうだな」

私は体を起こして大きく伸びをしてみる。

春の暖かい風が心地良い。


「ふぁ…」

「寝たら逃げらんねーぞ」

「んー…」

私はもう一度体を倒して空を仰ぐ。

絶好のお昼寝日和だ。


「…私寝るからチャイムなったら起こしてね」

「しらね」

「一人で逃げないでね」










鼻をくすぐるような草花の匂い、そしてどこからか聞こえる小鳥のさえずり、











子守唄のような哉太の小言と、暖かな風の中、









私は重たい瞼をゆっくりと降ろした―――…。

















ハミングバードの羽音の代わりに子守唄を

(おい、お前起きろ!…二人がきたんだよ!)
(え?…もう?え、ちょ、に、逃げよう)

((二人とも待ちなさい!!))
((待てといわれて待つやつはいない!))


10/04/03

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