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Spica
隣にいた彼女は




あれからもう一眠りして登校してきた俺は教室内でできている大きな塊に目を疑った。


「…何があったんだ?」


周りを見てみても状況は全くわからない。

そこで俺は外側にいた一人に声を掛けた。


「ああ、今日女子生徒が入ってくるんだってさ」

「女子生徒?」

俺は首をかしげる。そんな話してたか?

「正確には2年神話科になんだけどさ、」

相手は俺の疑問を読み取ったのかそう続ける。


「女の子なら誰だって知り合いになりたいでしょ」

「宮地には関係ないけどなー」

後ろからいきなり体重を掛けられ体がふらつく。

「お前…っ」

「お前は夜久さんと付き合ってるから関係ねーよなー」

体重を掛けてきた男子は髪の毛をしきりに引っ張る。

抜ける。そして痛い。


「でも神話科なら俺達はそんなに会えないだろう…?」

「んー…そうだな、選択で上手く重ならない限りな」

その男子はいやー、青春してるね、なんて爺くさいことを言って自分の席に戻ろうとしてた。


「…まあ、宮地は女の子に興味持たなくていいから」

「っていうかここ来るまであんだけ人だかりが合ったんだからわからないほうがすげぇ…」


ああ、だから今日は通りづらかったのか。納得。


「神話科って青空とかいるんだよなー…」

「で、夜久さんは女の子来て嬉しそうだったから行くだろうし…」

「「お前、とりあえず一日変われ」」

「無理だ」


くだらん。変われる訳ないだろう。

アイツらのくだらない話に付き合うのも飽きたから自分の席に着く。


それより俺は、朝の夢のほうが気になる。

今日は何時にも増してリアルだった気がする。


何かを予告するかのように、



いや、考えすぎか。













その騒動は昼休みになっても収まらず、俺は夜久に誘われ外で昼食を食べていた。


「すごく嬉しいの、友達になれたらいいな」

夜久は朝青空と一緒にいたのを見かけたらしく、嬉しそうに話す。

「それなら会いに行けばいいだろう。きっと向こうも女友達は欲しいんじゃないのか?」

俺は弁当をつつきながらそういうと、恥ずかしいし、と返ってきた。

いつもやってるだろう、と返そうと思ったがやめた。


「…わかった、私行く。…宮地君もついてきてよね」

ほら、食べ終わったでしょ!という夜久を俺は二度見する。


「俺、もか?」

「そうよ。本当は宮地君も見たいんじゃないのー?」

「…まあ、それは、」

そうだが俺はお前にそのニヤついた顔をどうにかして欲しい。













「いないねー…んー、食堂でも行ったのかな」

神話科の前に来たのはいいが、探しているその本人たちがいない。

おそらく昼食をとって校内案内でもしているんだろう。

俺が夜久に戻ろう、と声をかけようとしたら後ろから名前を呼ばれた。


「宮地君と月子さん、どうかしましたか?」

「あ、颯斗君」

周りの男子生徒の声がうるさい。多分、その女子も一緒なのだろう。


一足先に青空の傍に向かおう夜久につられ、俺も後ろを振り返る。



俺は一瞬、目を疑った。

いや、そんなはずはない。

俺は目を擦り、もう一度青空の隣にいる女子を見つめる。


「は、やと君、私教室戻ってる」

「あ…っ」

その女子と一瞬目があうと、その女子は視線から逃げるように教室へ戻っていった。



「…あの子だよね」

「はい、有紀彩さんです。月子さんとお話したいと言っていたんですが…」

俺は青空の口から出された名前と、記憶にある名前を合わせてみる。


…いや、違うよな。

下の名前が同じだけじゃ、わからない。


「どうかしましたか?宮地君」

青空に名前を呼ばれてハッとする。


「い、いや、なんでもない。…悪い、先に戻る」

俺は混乱する頭を必死に抑え、夜久にそれだけ伝え教室に急ぐ。








そんなはずない、

アイツは、昔に引っ越していったんだろう?

いるはずがない、













隣にいた彼女はあの人なのか

(そんななか、もう一人の俺が呟いた)
(あれが、彼女だったらいいな、と)

(それから俺は、また彼女と顔をあわせることになる)


10/04/01



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