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Spica
良い人すぎた


私が錫也と付き合い始めて、それなりに日にちが経った。

錫也は優しいし、一緒にいてくれるし、ご飯だって美味しいし。
とにかく理想像としては完璧なのだ。


だけど、このままじゃいけないという私がいる。
このままでもいいという私もいる。

このままいったら、きっと何事も無く平穏に暮らして、錫也と一緒にいて、卒業と同時に別れる。
あくまでもビジョンだから上手くいかないと思うけど。

でもきっと、このままいったらすぐ駄目になるようなきがする。


理由は簡単

本当に好きで、好きでたまらないのは錫也じゃないから。


どこかで誰でもいいと思いつつ、あの人じゃないと駄目だという私がいる。

錫也を見ては錯覚を起こす毎日。


お互いの隙間を埋めるように始まった私達の関係は、きっと変わることが無い。

私の意識が変わらない限り、それは絶対に。


そんな関係でも一緒にいるのは、この感じる心地好さ。
人間は良い物を知ると離れられないって聞いたことがあるけど、それは本当なのね。

私はこの感じる体温が心地好くて、離れられなくなっている。
あとは、私のずるさ。

あの人に想いが届かないことはわかっている。
あの人に拒否されるのなら、今私を求めて、傍にいてくれる人のほうが良い。

それが、当たり前だと思ってた。
そのほうが、いいと思っていたのに、



「…彩?」

「ご、めん…、錫也」


この人は、すぐに駆け寄ってくれるというのに、私はいつの間に、

あの人じゃないといけなくなったんだろう


「ごめんなさい…っ」


こんなにも似ているのに、どうしてなの?

それとも、似て無くても、これが錫也じゃなくても、
私はこうなっていた?



「彩?」

なんとなく温かい体温が抱きしめられた腕から、体から伝わってくる。

私はなんだかその体温にもっと泣きたくなった。
優しい、この体温は酷く残酷だ。


錫也は利用して、といったのに、
それが、いまいちできないのはきっとね、









利用するには、良い人すぎるんだよ…。


「彩、俺といるときに他の奴の事なんか考えないで」


軽く触れるようなキス。

錫也をみたらすごく綺麗な顔で微笑んでいるんだもの、










利用するには良い人すぎた

(罪悪感を感じずにはいられなかった)
(ごめん、ごめんね、)

10/06/18



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