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Spica
下手な嘘






彼女は、昔、一軒隣の家に住んでいた幼馴染だった。




彼女には兄弟が二人いて、しょっちゅう遊んでいた気がする。




そんな彼女はいつでも俺たちより大人っぽかった。






「いつまでも、一緒にいたいね」





そう、彼女は言ったのはいつだったんだろうか。





なぜ、俺はいつまでもそのことを覚えているんだろうか。



今日も、脳内を巡る。


















彼女は、小学5年のころに遠くに引っ越した。


本当は引越しなんかではない。


正確に言えば両親の離婚。そして片親の事故。


それが大元となり、彼女とその兄弟は親戚に引き取られたらしい。


幼かった俺は、アイツが引っ越したと親から聞いて泣いた気がする。



それほど、俺は彼女が好きだった。

いや、もしかしたら、現在進行形かもしれない。



そんな俺は、ただ純粋に彼女の言葉を信じていた。



「また会えるよ」


と、いう言葉を。



彼女が、近場に旅行に行くような感じでいうものだから。

彼女が笑って言うものだから、


俺はその言葉に安心して帰ってきたら遊ぼうと言った。


そしたら彼女の顔からは笑顔が消えたのを、少し覚えている。


「…また、遊ぼうね」

「本当にだよ」


あの時の俺は、彼女の鼻にかかった声に気付かなかった。


彼女は、幼いながら気付いていたんだと思う。


もう自分はここには戻ってこれないことを。

もう俺に会えないことを。

遊べなくなることを。


きっと、全部わかっていたんだと思う。


それでも彼女は、その瞳に溜まった雫を零すまいと笑ってた。



「…じゃあね」


そう言って、彼女が車に乗り込むところでいつも目が覚める。

















「…朝、か」



いつもは感じない気だるさに追われつつ、俺は時計に目を向ける。


画面に映る数字はまた5時を指している。


起きるには、早すぎた。



俺は未だ脳内を占領する記憶を頭の端にやり、水を汲む。

喉が渇いていたのか、冷たい水が身体に染みる。





あんな夢を見るようになったのは、夜久と付き合うようになってからだ。


なぜだろう、

いくら頭を捻ってみても答えは出てこない。




「…まだ、少し寝るか」


不思議な感覚を感じながら、俺は布団にもう一度潜り込む。










今思えば、














それはあまりにも下手な嘘でした

(俺の部屋には、まだ彼女にもらったぬいぐるみがひとつ置かれてる)
(わかってたから、これをアイツは置いていったんだろう?)


(だが俺は)
(嘘が真実に変わる瞬間を目にすることになる)


10/03/31

新連載です。
…若干くらい、と思います。



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あきゅろす。
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