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Spica
崩れ始める



俺は、今でもずっと気がかりになっていることがある。

それは、突然目の前に現れた有紀彩という女子だ。

本人、先輩、その他知人から聞くには、俺の幼馴染である
夜久月子の彼氏である宮地龍之介の幼馴染らしい。

宮地も彼女も決して自分からなにか言わないが、
きっと、俺たちの知らないところで何かあるんじゃないか、と俺は考えている。



「錫也って不満とかないの?」

俺は顔を彩に向ける。

俺はもう一度いってくれないか、という。

彼女は暫く視線を合わせると「夜久さんを他の人に渡してなにも感じないの?」そう言ってきた。


何も無いわけじゃない。

俺は、今まで幼馴染として、男としてアイツを守ってきた。

それを、宮地に奪われたんだ。

何も感じない筈がない。

でも、今は宮地に対して何を思うとかないし、二人には幸せになって欲しいと思ってる。


「それよりお前だ」

俺は彩にさっきと同じ質問をしてみる。

彩はいつもの様に微笑みながら


「私は別に何も無いわよ。龍之介が誰を好きになろうと関係ないもの」


本当にか?

俺は、その言葉を呑んだ。

きっといくら質問してもコイツのことだから、答えは同じだろうと思ったからだ。


「そうか…、でも、それは泣きながらいう言葉じゃないよな?」

「るさい…」


彼女の瞳からボロボロと落ちていくソレに、俺は肩を抱くことしか出来ない。


きっと、俺もお前も一緒なんじゃないか?


自分が思っている誰かの一番になりたいと思ってること。


それが、叶うことのない相手だってこと。


いや、今の俺は怖くて踏み出せないだけか。


「なあ、彩」

名前を呼ぶと、彩は涙の溜まった瞳を向けてくる。

「お前は、宮地が好きなのか?」

彩は一度視線を離し、また戻す。


「それで?馬鹿馬鹿しいと思うなら笑えばいいじゃない」

「笑わないよ。俺だって、月子が好きだった」

つい最近までな、と心の中で続ける。


「彩、叶わないって、分かってるんだろう」

そういえば、彩は静かに首を縦に振った。


こんな時にいうなんて、自分でも最低だって分かってる。

俺の中にいる誰かが、今なら止められるといっている。


「だったら彩」


でも俺は、









「俺と付き合ってみない?」










もう止められない。











崩れ始める関係とココロ


(私は、錫也を信じて、いいの?)
(ねえ、答えを教えて?)


10/06/07



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