矛盾願望
虎が私を震わせ。
雨が私の体温を奪い。
雷が私の助けを呼ぶ声を消し。
空腹が力を失わせる。
ロジャーは私を助けにはきてくれない。
たった数日過ごしただけで何を言っていたのだろう。
助けてくれるわけがないじゃないか。
自嘲を含んで、精一杯私は自分を嘲ってやる。
そうしないと保てない。
誰かを卑下しておかないと今の自分は保てない。
だったら今ここで自分を卑下してやろう。
そうすることが一番の薬だ。
生きる気力を失いつつも、臆病な私は死にたくないと未だに願っていた。
ロジャーに助けを求める声も未だに失ってはいない。
あの虎に殺されて食われるなんて絶対にいやだ。
どうして自分は農業がいやだと出てきてしまったのだろう。
平和で何が悪かったというのだ。あのまま平和に身を任せていれば、今頃は美味しい晩御飯と温かい環境に居れていたはずだ。
凍りついていた心は、萎れていった。
ロジャーに会わなければ、きっと今頃こんなめにあっていなかったはずだ。
それなのに、
考えることが全て悪い、負の方向に向かっていることに気付きながらも考えることをやめれなかった。
既に私の眼に希望は残ってない。だけど、それでも諦めることができずにロジャーの名をか細い声で呼ぶ。
でも今までと考えていたことは別だった。
ロジャーに助けてもらいたい。
それだけだった心が、ロジャーに来てほしくないという思いも見せてきたのだ。
私を助けにきたロジャーが虎に食われたら、それこそ私は全てを失い、終わるだろう。
ロジャーが死ねば、私に頼れる人間は居ない。
死なないためにも来ないで、ロジャー。私を助けて、ロジャー。
体温が奪われ、空腹で力を失った私は木に抱きついたまま目を閉じた。
どうせ死ぬのならば、眠って、痛みを感じないまま死にたい。
そう思った。
「ガウ!?ッ!、ガッ!、ガアッ!!!」
獣の呻き声に私は目を見開いた。
力を振り絞って、私は虎を見下ろす。
一番最初に目に入ってきたのは、
「赤」
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