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空腹動物



赤いキャプテンコートが見えた。
私は顔を明るくさせて、走りだす。
ロジャー!と名を呼べば、それはピクリと動くことすらなかった。

雷雨に打たれた私が見た「赤」は動物の死骸から見える肉だった。

お尻の方から丸齧りされたシカに私は後ずさる。
シカをこんなふうに出来るのは肉食動物だ。さて、肉食動物って一体何がこのあたりに生息しているんだろうか。

一番心当たりがあるのは猪。
だけど雑食性だったと思うし、猪ってこんな感じでシカを襲う生き物だっただろうか?

一番考えたくないのは虎とか豹とかその類だ。
あんなのと出くわしたら、それこそ私が餌となる。
や、待て。
こんなところに居たら、私こそ「どうぞ、私を食べて下さい」と言っているようなものじゃないか。



逃げよう!



冷や汗が背中に流れた。
耳を澄まして、動物の鳴き声がないか確認して恐る恐る私は飛び出した。
目指すは近くにある一本の木。
こうやって特定の木を目印にして進もう。いざとなったら、直ぐにでも木に登って逃げれるようにしよう。

森の恐怖を存分に体験なんてしたくない一心で私は信じられないくらい頭を働かせていた。



のに。



ぐるるるる、と音が聞こえて木に指をかける。
急いで後ろを振り返れば確かに見えた黄色い体。
ひいっと声を漏らして、木に手をかける。虎や豹は木の上にまでは登ってこない。
だけど、本当に?
涙が出そうなくらい怖い。
必死に木にのぼって枝を支えにしてしがみ付いた時には、虎は私の直ぐ下にまできていた。


獲物を狙う、鋭い目が私を射抜く。


腹が減っているのだ。だからお前を食う。
そう言っているような気がして、私は血の気がひいた。
くらりと貧血で倒れそうな気がするのを何とか耐えて、丸太のような木にしがみつく。

鼓動が早い。



お願いだから虎。

何の行動も起こさないで。



私は、

死にたくない。






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あきゅろす。
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