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雷雨死心


山の天気は移ろいやすい。
女心と秋の空。

一本の木に凭れかかった私は昼よりも消耗した足を眺めては溜息をつく。
きっとロジャーもどこかでこうしているか、それとも目的地で寛いでいるのか。
私を探していてくれる―――甘い期待を持たないようにすることを私は必死にしていた。


ロジャーは私を探していない、甘えるな。命取りだぞ。


そうやって自分を律しないと、本当に崩れそうな弱い心だった。



雨が降り出して数分だろうか。
数分でも私には長く感じられ、意を決して雷のなる雷雨の中、私は足を踏み出した。
斜面を登り登りしていく私の姿は数十日前の私が見たら驚くだろう。
でも人間、こうやらなければ生きてはいけないという勘があるのだ。


今、立ち止まっていてはロジャーに本当に追いつけなくなる。


そんな思いが私にはあった。
だから足を踏み出した。
それだけのことだ。



「ロジャー…」



呟く名前はロジャーのものばかりではない。
お父さん、お母さん、弟、ペット。
友達、知り合い、おじいちゃんやおばあちゃん。
皆の名前を呟いて、私は歩き続けた。


足がパンパンに膨張するような感じが痛くて堪らない。


涙をこらえて、私は歩く。
幸いなことに雷が怖いなんて女の子らしい感情はない。
只いうならば、雷が直撃すると怖い。
雷の音は大丈夫だ。耳も慣れている。だから、あとは。



ロジャーを見つければ何とかしてくれる!



きっと熊も蛇も生態系は分からないけど、きっと雷雨の中では動けまい。
そんなことを考えて私は歩く。
ぐーぐー煩いお腹はずっと空腹を訴えているけど、眠気が私を襲っているけど、今足を止めたら私は本当にギブアップで動けなくなる。



一つの脅迫概念が私を動かし続けた。


 

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あきゅろす。
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