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水中思案



血塗れた大地にゆっくりと足を降ろす。
飛び散った血飛沫、開いた瞳孔、死んだ虎。
悪いことをしたわけでもない私は、視線を虎から逸らして駆け出した。
木にしがみついていて冷や汗や脂汗はかいたが、体力は回復していたのだ。


(直(すぐ)に血の匂いに敏感な動物がやってくる…!)


それを頭に別方向の斜面へと走った。


雷雨は小雨へと変わって、あれだけ見つけにくかったロジャーの姿は直ぐに見つかった。
探しに行こうとした気配はなく焼けた魚と山菜を用意していたロジャーは私に魚を突き出す。
何も言わずに受け取った私は5本くらい魚に齧りついて、そして寝た。



ロジャーとは一言も言葉を交わさなかった。




翌朝、私が目を覚ましたのは正午近くになってからだった。
昨日の疲れたが溜まったのだろう。ぼんやりする頭で考えて、川に顔を洗いに行く。
バチャバチャと洗って目をこすってから、綺麗な川を見て考える。


「ロジャー、来ない、よね…?」


結構遠いし、と上着から下着まで全て脱いで川へ入る。
冷たい水が山登りで疲れ怪我をした肌を刺すかのように痛い。だけど、気持ちが良かった。
泥がこびりついた足をよく洗い、石鹸やスポンジがなくとも手と指でゴシゴシと体をこすることで汚れは落ちていった。

最後に川へ潜って、髪をかきむしれば洗髪もOKだ。

まだ若い女の子でありながら酷い生活だと思うが、結局ロジャーについてきたのは私だ。
それに農業や家事をやっていないのだから、このくらいのことは仕方ないかもしれない。
それに、と昨日の虎のことを私は思い出した。


「………」


やりきれない思いがむらむらと湯水のように湧き出す。
悔やみきれずポチャン!と全ての肌が水に埋もれた。




痩せた、と思う。
あまりにも体格に変化が出るのが速かったからやつれたのかと思った。
だけど、確かに痩せているのだ。

ぽっちゃりだった体が少しずつ脂肪を落としていくのを感じている。
ぷにぷにしていた体が少しずつ筋肉を持ちだしてるのを感じている。
体が子供の頃のように骨張っているわけじゃないけど、変わってきている。



それに、

私の、

馬鹿で、

弱い、



性格も。





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あきゅろす。
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