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SSA!
act04 イチ君その2

自分より大きくてあたたかな手に鼓動が速くなった気がした。


「つ、疲れたぁ」

「ひなひなナイスだったぞ」

「案外根性あるんだねぇ見直したぞひなひな!」


高橋さんと芹沢さんは元気そうに先程の体育について話し出す。私は会話について行けず、やっとふらふらして歩いてるだけだ。
最終授業が体育だとこうも疲れる。


「早く帰ってお布団に入りたい」

「え!ひなひなここはお布団より私の用事に付き合ってよ!」

「……え……用事?」

「そう用事!それは」

「それは……」

「それはねぇ……っとひなひな前!前!」

「?……っ!」


高橋さんの方を見ていたから前に人がいても気付かず私はぶつかってしまった。


「す、すみません……!!」

「……」

「おおっと……さすがだひなひな!」

(なにがさすがなんだ……)


ぶつかってしまった相手を見るとこの前イチさんと一緒にいた男の人だった。
男の人は不機嫌そうに私を見るのでぶつかったのを怒ってるのかと思いまた謝ろうと口を開くと……


「お前は確か甘泉ひなですね」

「!?あ、はい……」

「丁度いい……放課後二階のパソコン室に来て手伝いをして下さい」

「……はぁ……えっ!?」


何で私の名前を知ってるんだろうとか考えてる間にこの人は勝手になにかを決めた気がする。

(て、手伝いをして下さい…?)


「……な、なんで」

「君、放課後暇なんですよね?頼みましたよ」

「え……ちょっと待って下さ……」


彼はそう言うと、隣をスタスタと通り過ぎて行く。
私はしばらく固まっていたが、高橋さんが目をキラキラ輝かせて肩を叩いた。


「ひなひなぁ凄いじゃん!イケメンの副理事長様と知り合いなんて〜これもあれか!私が神社で祈ったお陰か!」

「……」

「頼み事なんて仲良くないと出来ないもんねぇ〜ひなひなやるぅ」

「……」

「?ひなひな?おーいひなひな」

「ひなっ!」

「!?」


芹沢さんにより、我に返り二人に振り向くと高橋さんはまた笑顔で話し出す。


「もーどこいってたの」

「す、すみません現実逃避したくなりまして……」


帰れると思ったらいきなり頼まれ事をされたのだから現実逃避したくもなる。


「……行かないと行けませんかね」

「行くべきでしょ!そこにイケメンがいる限り!」

「いや、高橋さんだけですよそれ」

「行くべきでしょ。だって副理事の頼みだし」

「ですよねぇ……え……副理事?」




(知らなかった……)

二階の廊下を歩きながらさっき聞いた事実に私は驚いていた。

(あの人副理事だったんだ……)

ぶつかった相手は今年副理事に就任して来た人物らしい。

(確かに挨拶していたような気がする。……名前は確か……)


「リヒト!」

「そう、リヒト……ってえ?」


目的の場所から聞こえた声に私は立ち止まる。この声は前聞いたことがあると思い、恐る恐る私は扉を開くとそこには……


「なーんで俺こんな雑用しなきゃなんないのさ」

「お前が暇そうにしていたからです」

「ひ、暇にしていない!帰って資料作成しなきゃ部長に怒られるし……」

「すぐ終わりますよ。助っ人呼んでますし」

「助っ人って……あ」


目があい、彼は一瞬驚いた顔をしたがすぐ笑い私の方に駆け寄って来た。


「ひな!」

「イチさん……」

「助っ人ってひなだったんだ」

「え……まぁ……」

「……」

「イチさん?」


イチさんはじっーと私を見ると、にこっと笑った。


「俺さ、ひなにまた会えて嬉しい」

「!?」


格好いい人に近くで笑顔で言われて私は真っ赤になる。


「ひな?」


無言でいるとイチさんは更に近くに寄って来て顔を……


「お前ロリコンは犯罪なの知ってますか?」

「はっ?」


覗きこもうとしたが、リヒトさんの言葉によりやめる。


「この前も注意しましたがその勘違いさせる発言気を付けた方がいいと思います」

「勘違いさせる発言?なんのことだよ」

「わからないんですか……それは……」

「それは……?」

「お前が甘泉ひなに対して」

「遅くなってすみません……手伝いに……甘泉君?」

「はすみ……先生?」


二人の会話の邪魔をして入って来たのは、はすみんだった。




「蓮水が来てくれて助かったよ」

「いえ、それはいいですが何故甘泉君がいるんですか?」

「私が頼んだからです。」

「……貴方と彼女が知り合いでした?と聞きたかったのですが」

「そこにいた生徒に頼んだだけの話でしょ。仲いいとは関係ありません」

「……」

(気のせいでしょうか…)

はすみんが副理事を強く睨んでいる気がします。副理事は興味なくプリントに目を向けてますが。


「イチさんあの二人って……」

「あの二人?あぁ……いつもあんな感じだよ」

「いつもって……仲悪いんですか」

「まぁ、そうだね……仲悪いかもね。」


イチさんは興味なくプリント並べて行き、私にホッチキスを渡す。


「並べた順に重ねて止めていってね」

「はい……」


(なんかあったのかな……)

関係ないだろうが、はすみんの仲悪い人がいるという友好関係が少し気になった。


「それとさ、ひな」

「はい」


(そしてこの人ははすみんと仲いいし)

知らなかったはすみんの友好関係を少し知れてなんだか楽しいようなそうでもないような不思議な感覚だ。


「俺の事イチさんじゃなくて呼び捨てでいいよ」

「え、それは……年上だし」

「でも、なんか違和感あって嫌なんだよね〜」

「そう言われましても年上を呼び捨てするわけには……」

「じゃあイチ君とか!」

「いやいやそれは……」

「……駄目?」

作成した資料を置いてイチさんは首を傾け悲しそうな顔をする。
そんな顔はズルい。格好いい人にそんな可愛い顔されたら断れないじゃないか。


「ひな」

「わ、わかりました……い、イチ君……」


しょうがなくイチ君にすると、彼はぱぁぁっと目を輝かせた後笑う。

(う、可愛いなぁ……)


「うん、それでいいよ」


私より年上だというのに彼は可愛く感じてしまう。


「イチ」

「ん、なにリヒトまだ資料半分も作ってないよ」

「それは見ればわかります……私は理事長室に一旦戻りますが……」

「戻りますが?」

「甘泉ひなを生徒を口説いたりしないでくださいね。責任は私になりますので」

「!?別に俺口説いたりしてないよ!」


イチ君は手をぶんぶんっと振り、副理事に否定をする。


「どうだか……先程名前を呼ばせようとしていたでしょ」

「それは仲良くなる為にだよ!仲良く作業した方がいいでしょ?」

「……仲良くなり過ぎないよう気を付けて下さいね。蓮水も監視頼みますよ」

「……」

「蓮水?」

「わかりましたから早く戻ったらどうです?理事長お待たせさせないで下さい」

「わかってます。では、任せます」


副理事はそう言うと、教室から出ていった。


「リヒトは何心配してんだよー俺だって一回り年下の子口説いたりしないよ」

「ですが、イチ君甘泉君を可愛いと言ってましたし」

「は、蓮水まで心配してるの?」

「生徒を守るのが先生の役目ですから」

「二人が心配することないって……ね、ひな?」

「!?あ、はい」


(びっくりした……)

はすみんとイチ君で格好いいと綺麗な人って並ぶ姿をめったに近くで見ることが少ないから眺めていたら話しかけられ驚いた。

(まぁ……うちの会長さんと副会長も綺麗とかっこよくていつでも眺めていられるんですが)

でも、それも朝礼の時か移動でたまに通る時くらいでこうも近くで見れない。

(イチ君こんなに格好いいし性格もいいんだから彼女いるんだろうなぁ……)


「?ひなどうしたの?」

「あ、いえ……そのイチ君格好いいし性格いいから彼女いそうだなって思って」


(いたらきっと可愛いくていい子だろう)


素直に考えていた事を聞くとイチ君は笑う。


「あはは……まさか彼女なんていたことないよ」

「え……」

(いたことが…ない?)

意外な発言に私は固まる。

「格好いいとか言われるけど多分髪型で誤魔化してるし蓮水やリヒトの方が数倍格好いいし、性格だって俺みたいな面倒なやつ嫌だと思うし」

「え?」

はすみんはともかくリヒトさん……副理事には勝ってると思う。
高橋さんが副理事を凄くイケメンだと推していたが私には一般よりちょっと上レベルだと思うし。


「そんなこと……」

「慰めてくれるの?ひなは優しいね」


イチ君は笑顔で私にそう言う。慰めじゃなくて本当なのに……

(現実って意外な事実があるんですねパパ……)


「雑談もいいですが、イチ君進めないとリヒトの野郎がうるさいですよ」

「そうだね進め…」

「あ、先輩なにして……」

「!?」


優しげな声が聞こえたと思えば明かりが消えて真っ暗になった。



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