SSA!
act03 イチ君その1
「はぁ………」
「おはようひなひな〜昨日大丈夫だったか?」
「え?」
教室までの行く最中に高橋さんに話しかけられた。どうやら心配そうに見ていてわからずいると随分と驚いた顔された。
「えって…昨日女子に拉致られてたじゃん。大丈夫だった?」
「え…あぁ…そうでしたね……」
(すっかり忘れてました……)
「そうでしたねって……」
だって忘れてしまったものはしょうがない。昨日の彼女たちの厄介な八つ当たりより蓮水先生もとい今日からはすみんと心で呼ぼう…がとてもムカついたのだから。なぜならば……
「嫌です」
「え………」
あっさりと断られて、驚きの顔で先生を見上げる。
「生徒とあだ名で呼ばれるほど親しくなるつもりはありませんので」
「いや……でもその…」
「もうすぐ下校時間ですね…甘泉君校門まで送りますので…立てますか?」
「あの……」
「先程の件はもう終了したはずですが…まだ続けるつもりですか?」
「……!!」
少しでも仲良くなって、気まずい空気とかなくそうと思っていたのにその態度された。
(普通生徒と仲良くなろうとしませんか…普通は……)
別に恋愛関係なんて求めてませんしなりたくもないが、先生として…あぁ…考えるだけで嫌になる。
(はぁ…結局重い空気なのは変わらないのかなぁ……)
「ひなひな大丈夫なの?」
「まぁ…どうにかするしかないですよ」
「そうだよね!どうにかしてこそ逆ハーフラグ回収者ひなひなだよね」
「はい…雑用係も…え?」
「はすみんファンクラブ達の攻撃も耐えてこそ…」
(はすみんファンクラブ……?…………。)
「忘れてた……」
「ん?」
昨日はすみんが助けてくれた原因になったあの子達のことを…普通に登校してきたけどどうするべきなんだろうか。また何かしだしてくるんじゃないのだろうか…
(余り深く考えていなかった……)
漫画みたいなどろどろしたいじめになったら……そう考えたら教室の扉を開けるのが怖くなった。だけど、開けないと…何もありませんように!と祈りながら扉を開ける。
「ひなひな凄いじゃん!」
「ほへ……?」
そこにいたのはお団子頭をしたクラスの中心で騒がしくしている系の女子がなんだかいた。
(この人…確か芹沢さ……)
「あのはすみんの雑用係になるなんてさっ!」
「…あ、あの……」
「仲良くなりたいなぁ…って始業式から見てたわけ!でもなかなか話しかけれなくてさー」
「あ、あの……」
(何…!?)
人の話聞かずずかずか話してくるこの感じは…似ている…。隣にいる人を見ると目をきらきらさせていた。
「おー芹沢じゃんかー」
「おーっす高橋元気じゃんー」
(やはり友達か……!)
類は類を呼ぶってやはりそうなんだろうか…すごく納得します。はい……。
「で、ひなひな!はすみん狙いって本当?応援し」
「違います…」
私はきっぱりとそう答えた。
(おかしい………)
今日一日昨日呼び出した子達を思い出す。
おかしいのだ…昨日何かしてきたのに何事も起こらない。
(起こらないのが一番だけど…こうも起きないものなんですかね……)
昨日で諦め着いたのだろうか……。それだといいのだが…でも、あちらもちらちら私を見ては何だか芹沢さんを見ていたような気がするし一体なんなんでしょうか…
(まぁ…何もないんだったらいいんですが………)
何もないのが一番だと誰かも言っていたことだしいいことにしたい。それより今は違うことに集中したほうが良さそうだ。
(そう資料室整理だ)
昨日邪魔をされたとはいえ、出来なかったのだから今日もやることになり、頼まれた本も資料室へと戻すようにと渡され現在運ぶ最中だ。
(重い……)
少しでも多く運ぼうとした結果、持てるだけもった結果だ。まぁ…漫画にあるような本を目の前まで積むことはしなかったが結構の量だ。
(でも、半分まで来たし引き返すには勿体無い…頑張るしか……)
「リヒトは人使い荒過ぎるって……全く……」
(な……!?)
「アイツ…は…って…わ!」
「ひゃ……!」
目の前が見えなくなるほど持ってはいなかったが、かどに人が来ると予想していなかったためぶつかり、本が散らり私も転んでしまった。
「うわ…ごめん…前見てなくて…」
「いえ…こちらこそ……」
「本当にごめん。怪我はない?」「はい…大丈夫です」
ちょっと腰が痛いが、対した怪我じゃないだろう。それより散らばった本を集める方が先だと集めているとふわりとはすみんとは違ういい匂いがした。
「本当にごめん…お詫びにこれ運ぶの手伝うよ。どこ?」
「いいですよ。悪いです………」
二人で集め終え、顔をそっと上げるとそこに街で声かけられたら喜ぶ爽やかで格好良いお兄さんがそこにいた。
「というか、こんな量の女の子運んでるの無視出来ないし運ぶの手伝うよ」
「あ、いえ…でも……」
お兄さんは慌ててる私を無視して、軽々と本を全部持ち上げてしまう。見かけが細身だが案外力があるのかもしれない。
「道案内宜しく。俺、白桜詳しくないし」
「…はい」
断ろうとしたが、彼がそれを許してくれそうにないのを早目に察知ししぶしぶ返事をした。
「あれ…ここって……」
資料室に辿り付き本を本が散らばっているテーブルに置いてから、彼は辺りをきょろきょろさせうーんと唸りながら考えるポーズをする。
「もしかして…ここってさぁ……はす…」
「?」
「甘泉君私も少し手伝いを……あれ?」
声を遮るように扉が開きそこにははすみんの姿があり、彼は私と彼を交互に見てそれから見たことがないように少し嬉しそうにしてお兄さんに近づき…
「イチ君来ていたのですか」
「あ、やっぱり蓮水がよくいる場所だよな」
(え………!?)
嬉しそうに話し出す先生に戸惑いを隠せない。はすみんは常に無表情か怒った顔をすることがあるが、嬉しそうな顔なんて記憶ではみたことがない。
「副理事に呼ばれてですか?」
「まぁ…そんなとこ…」
「イチ君も大変ですね……」
友達か何かだろうかと考えていると、はすみんはちらりと私を見てそれからまたイチ君をまた見る。
「ところで何でこの場所に……?」
「あぁ…この子重そうに本を持っていたから手伝いでここに来たんだ」
「あぁ……」
「…しかしさぁ……」
イチと呼ばれた彼はこちらを振り向き、じーっと見つめるもので思わず目を逸らしたが彼はにこっと満面の笑顔を向け眩しくて更に視線を合わせれそうになくなる。
「やっぱり白桜は可愛い子多いって聞いていたけど本当に可愛いね」
「え……!?」
「?」
イチさんのセリフで驚いて顔を上げると彼はもうはすみんの方を見ていた。
「イチ君…うちの生徒にナンパはやめて頂けますか」
「思ったことを言っただけだよ。可愛いなぁって…」
「…犯罪です」
「…可愛いって言う事は犯罪にならないでしょ?」
「………」
はすみんは不機嫌そうな顔で、イチさんを見るが気にしていなくまた私を見つめる。
「それにさ……」
イチさんが少し屈んだ。
「始めて会った気がしないんだよね…もしかしてさ……」
イチさんがふわりと笑って…
「夢で会ったとかだったりして……」
――え?
「なーんて……いたっ……」
あははと笑うイチ君の後ろにはいつの間にか現れた全身が黒い服の大人のエロさを感じる人がいた。手には本を持っている。
「お前帰ってくるの遅いと思ったら何少女漫画…いや恥ずかしいポエム読み上げているんですか」
「リヒト!!」
「聞いていたこっちが恥ずかしい内容でした…あー恥ずかしい」
「ちょ……」
「リヒト…さんに賛同はしたくありませんが、とても恥ずかしかったですイチ君」
「えー蓮水までもかよー」
イチさんは二人に挟まれながら文句を言う。私はというと…とても……
(どうしよう……)
ドキドキしていた。だってあんなセリフなんて言われたことがないし、恋に恋したい年頃の私としましては…十分だった。
(そう言われると会った気が…いえいえ騙されちゃ……)
「ねぇ……」
「は、はい…!?」
「名前聞いてなかったよね…君名前なんていうの?」
「甘泉ひなですが……」
「ひなか……」
「!?」
呼び捨てされ驚いて彼を見ると満面の笑顔で口がそっと開かれた。
「宜しくな、ひな」
握手を求める手は私よりも随分と大きく温かく、やはりどくんっと小さく鼓動が鳴った。
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