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SSA!
act01 蓮水先生その1
私はどうも蓮水先生が苦手である。

そう、苦手なのにだ……

「このクラスを受け持つことになった…蓮水です。」

黒板には綺麗な字で蓮水と書かれた黒板と、見惚れるほど整った容姿の蓮水先生を見ながら私は大きくため息を吐いた。

私のクラスの担任になってしまったのだ。







「はぁ……」


何度かわからないため息を吐いていると、別のクラスになってしまった友達が笑いながら話しかけてきた。


「ひな聞いたぞー蓮水担任になったんでしょ?いいなぁ…目の保養じゃん」

「それだけでしょう」

「お」

「授業や提出が遅れただけで遠慮なく罰点つけますし、授業中少しの無駄話さえ怒りますし…苦手なんですよ」


そう、蓮水先生はよくいる厳しい真面目な先生だ。他にもスカートの丈が短いと注意もするし、煩い。

「何より……」

「あー」

頭に思い浮かぶのは入学式の出来事だ。

私は綺麗な先生がいるので、中学校って格好良い先生とかいるんだ担任だったらいいなぁっと思ったりもしていた。ほかの生徒も同じく思っている人も多かっただろう。
なのに、あの先生はマイクを持つなり……

「1−A副担任を預かることになりました蓮水です。まず、初めにいいます。私に恋心を抱いた方は今すぐ諦めて下さい」

なんて自分の顔に自信があるだろう…ナルシスト?とか確かに顔は綺麗だから勘違いでもないかもしれないが、普通入学式に言うだろうか……ありえない…。

その後先生は何事もなかったように戻るがざわめきがおさまらなかった。

なんだか関わりたくないのから厳しい性格もあって段々苦手になっていた。


でも、副担任だったではあるが我慢はできていた。そうできていたのに……

(担任になったら関わること多くなるじゃないですか……)

まず朝と帰りに会うことにもなる。それにHRも蓮水先生で中二となったら進路相談もある……

「明日から嫌です………」

「まぁいいじゃん。ひなは蓮水の顔は苦手なの?」

「綺麗で格好良いので見てるとドキッとはしますね……」

元気なくそう答えると友達のこむぎことむぎちゃんは楽しそうに私の肩を数回叩く。

「じゃあいいじゃん!一日の四分の一くらい見れるんだから得だって!」

「そうだね。喋ったりするのは担任だろうが数回くらいしかないだろうし」

可愛らしい笑顔で言ってくれた姫亜ちゃんに言われて、暗かった気持ちが少し軽くなった。

(あぁ…そうか数回くらいか……)

朝の出席に返事をするくらいで、学級委員にならない限りは話すこともないだろう。そう考えたらどうにか一年は過ごせるかもしれない。

「というかそれよりひな人見知りじゃん〜友達できたの?」

「う……」

(痛いところをつくなぁ……)

「そうだね、蓮水先生よりそっちの方が重要だよ」

「うー」

「ひなまずは笑顔で挨拶を…」

「が、頑張ります………」

(そうだ……蓮水先生より友達を作らないと…何も始まらない……まずは……)







クラスの扉側の一番前、そこが私の席だ。クラスの人が入ってくる場所だから挨拶しやすい…しやすいんだけど。

(勇気が…勇気が……)

”おはよう”の四文字がいうのが難しく、過ぎ去って友達いる人へと歩いていくのが見える。

(少しの勇気…少しの…頑張れ…)

次来た人に挨拶をすると決めて、待つこと数分…やっと人が来ておはようと言おうと口を開く前に……

「おめでとう!」

「おはようございま……え?」

彼女が先に話しかけてきた。私の前に立ち笑顔でこう言い放った。

「今日から君はモテモテだ」

「は……?」

(ソレハドウイウコト?)

今日から君はモテモテだって…私はどこにでもいるような外見だし可愛くもないし…というか何で今日から?意味がわからない…と口をぽかーんと開いていると……

「なぜならば…私が……」

「SHRを始めるのに邪魔ですので避けて下さい高橋君」

「おおっと失礼」

「は、蓮水……」

目の前に蓮水先生が来て、丁度よくチャイムがなり彼女こと高橋さんは笑顔を私にしそのまま去っていく。

「担任を呼び捨てとはいい度胸ですね」

「う……すみません」

先生に謝るが、蓮水先生は私を睨むようにじーっと見ていて。怖いのと綺麗な顔で見られてるのが恥ずかしい気がして視線を逸らすと更に機嫌悪そうになった気がする。

「あ、あの…始めないんですか…」

「君は……いえ、なんでもありません」

「………」

先生はため息を吐くと、教卓の方へとくるりと戻り息をほっと吐く。

(心臓が今でもドキドキしています…)

整えるように息を吐き、私は教卓の方へと向いた。






(しかしなんだったんだろう……)

朝に話しかけてきた高橋さんは一体何がしたかったのだろう…いきなりおめでとうに今日からモテモテだなんて。

(からかわられたのかなぁ……)

「甘泉君」

「は、はい掃除ちゃんとします」

「………」

考え事をしていて蓮水に注意されなので箒を取りに行こうとしていると。


「ひなひなぁああああああ」

「ひゃああああ!!」

「え?あ!!」

「ん?」


後ろから声をかけられ、驚いてしまい目の前にあったバケツに気がつかず私は足をひっかけ豪快に転び…


「おぉ…!!」

「へ……」

なんだか肌さわりのいい生地感と、上品ないい香りが目の前に広がって…広がって……


「ひなひなやるぅー」

「!?!?!?!?!?!」


気がつけば蓮水先生に体を預けるように乗っていて、私はピタリとかたまる。

(え…何で転んでこうなった……?)

あぁ…さっき先生近くにいて転んでバケツがひっくり返って滑って後ろにいた先生を巻き添えになったのかな……。

冷静に状況を判断していると冷たい声が私の上から落ちてくる。

「考えるのは結構ですが早く降りて頂けないと濡れるんですが」

「す、すみません……!」

(そうだ…ひっくり返したから床が……ひぃぃぃ)

立ち上がったら不機嫌そうな蓮水先生と目があい、私は青くなる。
そりゃあそうだ。巻き込まれてスラックスを濡らしてしまったのだから。

「すみませんクリーニング代出します」

「生徒にそんなもの請求しません」

(不機嫌そうに言われても……)

蓮水先生は立ち上がり、濡れたスラックスを見ていて機嫌が悪いのがわかる。
担任になって早々問題なんて、避けたかったのに…いや、まだ間に合うかもしれません。どうにか……

「だったら先生!」

「え?」

高橋さんがとなりから横入りし、キラキラ目を輝かせながら先生に近寄る。

(何か嫌な予感がする)

さっきだってこうなったのは高橋さんのせいだし…と止めようとするが高橋さんの方が行動が早かった。


「ひなひなが先生の雑用係になって迷惑かけた分働きます」

「え」

「………」

(それって……)

雑用係って…一日に何回も蓮水先生と話すことになるんじゃ………と思って、慌てて取り消そうとするがドンっと見ていたほかの女子に邪魔された。

(え?今度は……)

「ずるい…だったら私が蓮水先生の雑用係します!」

「みきがするよぉ〜甘泉さんみたいなのよりいいと思うし」

(蓮水狙いの子!?)

入学式や厳しい態度であっても好きな子は好きらしく、こうやって話しかけてくる子は多い。まぁ……こんなのは…あだ名にある……

「お断りします。邪魔にしかなりません」

”ブリザード”の如く散らせる遠まわしにも直接的にもふるのだ。それでも諦めない女が多いらしいんですが。


「え〜そんなことないって」


(でもよかった……)

蓮水先生が自分で今断ったから、私はどうやら雑用係になることを避けられたようだと安心していたが、ちらりと先生と目があい。


「ですが、君たちと違って甘泉君には手伝って貰わないといけないようで」

「へ?」

「宜しくお願いします雑用係を甘泉君」

「へ?」

ドキッとトキめいて目を逸らしている間に先生はそう言い捨てて、去っていった。

(宜しくお願いします…え?え……)

「やったな、ひなひな」

「くそ…甘泉ぃ…狙ってないと思ったのに狙っていたのかよ」

「え?」

「敵な。アンタ敵」

「え?」

――えぇぇぇぇぇぇぇ!?


雑用係へとなってしまったのだ。





(どうしよう…どうしよう……)

泣きそうな現状になった気がする。いや、もう半泣きなのだが。
クラスの蓮水ファンってのは苦手ないつも騒いで煩い女子たちというかクラスのリーダーみたいな子…つまり、友達は出来ないだろうしもしかしたらいじめられるかもしれない。

(最悪だ……これも…)


「そこで願ったのよ!神社に…私よりみっつ右の子がモテモテになりますようにと!」

(この高橋さんのせいですよ!というか何人に押し付けてるんですか)

大体神社ってのは決意を示すものでって頼むものじゃないってパパが言ってましたよ…っと言いたいが元気がなく、言う気力がない。

「だからひなひなの未来はモテモテだ」

「…別に嬉しくありませ…」

「甘泉わりぃ!」

「へ?」

「お!」

声をかけられ、顔を上げると夕焼けの教室に似合う部活用鞄をもった二人が困った顔していた。

「あんな場所にバケツおいていたの俺なんだ…まさか…あんなことになるとは」

「本当にごめん」

「おぉっと…勇崎爽真委員長にサッカー部キャプテンの翼君じゃないか…これはまた結構なレア率の」

「つかお前のせいだろほとんど、謝れよ」

「え?」

二人して謝ってきたから驚いて見ていると、テンション高い高橋さんに翼君と言われた口が少し悪い方が睨む。

「甘泉お前のせいで転ばせて面倒な雑用係させてさ」

「え?私のせいだったの?」

「どう考えても高橋さんに驚いてだよね…置いた僕らも悪いけど」

「あ……」

なんかに気付いたらしく、本当に悪そうな顔して私を見る。

「ごめん……私のせいだったんだ……」

「雑用係もだろ。甘泉やりたくなかったのに」

「え、そうだったの…ひなひな蓮水先生狙いかと思って……」

「どうしたらそう見えるんだよ……」

どうやら彼女は勘違いしていたらしく、自分の間違いに気付いたらしく落ち込んで暗い顔になっていく。

「ごめん!テンションが上がって……ひなひなの協力するつもりが……」

「あ…いえ…大丈夫です……」

「本当に?今からでも蓮水先生に言って雑用係を……」

「甘泉君…」

「あ、蓮水先生」

蓮水先生が教室にプリントを持って入って来ると、高橋さんが近寄ってくる。

「蓮水先生さっきはすみません…あの…甘泉さん……」

「あぁ…君も手伝ってくれるんですか」

「え?」

「これ資料クラスの人数分作成しといてください」

「はぁ……」

「宜しくお願いします甘泉君に高橋君…では……」

「あ」

バタンと、扉が静かにしめられ高橋さんははははとため息付きながら私に笑う。

「ごめんひなひな、言いそびれちゃった…」

「い、いえ…別に…」

「これ作り終わった後にちゃんと言うからさ。ひなひなはもう帰っていいよ」

「え?高橋さんもしかして一人でやるの?」

「だってひなひなやりたくなかったのにやらせるわけいかないし、何よりはすみん困っていたら助けてあげたいじゃん。イケメンだし」

「お前イケメンには優しい…つうかはすみん?」

「その方がブリザードより可愛いじゃん、ねぇ、ひなひな」

「あ、はぁ……確かに……」


蓮水先生と呼ぶよりは可愛いくて親しみあるかもしれない。本人に呼んだら怒られそうですが…


「まぁ…いいけどさ。俺ら部活だから手伝えないぜ」

「そう?別にいいよ。私一人ではすみん妄想してやるから」

「…お前楽しそうだな」

「何の妄想するのか気になるけど聞かないでおくね…じゃあね甘泉さん、高橋さん」

二人はそう言うと出ていく。残された私に高橋さんは


「さてと、私やるからひなひなは……」

「…私に頼まれたからやります」

「え?」

「一度頼まれたらちゃんとやる……それがお父さん言ってましたからやりますよ雑用係」

「ひなひな……」

「放り投げることはしたくないですして…」

(それにこれで…テンション高くて問題多いけど、高橋さんいい人みたいだし……友達……になれるかな……)

「お人好しだな」

「う……で、でもやると決めたらやります。」

「でも、そういうとこ嫌いじゃないぞひなひな!」

「ありがとうございます。」


苦手だからって逃げいたらいいとこわからないかもしれませんしね。

(あるのかどうか…わかりませんが………)

きっと人間だからあるに決まってる……決まって……




「あぁ…そこ置いといて下さい」

「はーい」

「……」

「遅いので帰って下さい」


(やっぱりないや……)

ありがとうのひとつも言わない教師にそう思った。


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あきゅろす。
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