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駄文
日常の中の非日常 (スマユリ、パロ)


 人生って、何が起こるか判らない。

 判らないからこその人生であって、それなりの楽しみ方、生き方ってモノがあるんだと思う。
 イイもワルイもね。



 だけど、さ。




「………は…?」




 ぼくは目の前の光景を信じられず、ただただ瞬きを繰り返すばかり。
 でも結局はそんなことしたって何の意味もなくて。

 ぼくは取り敢えず、いろんな妄想でもして現実逃避をしようと試みたんだけれど、やっぱり目の前のソレは現実なようで全く意味がなかった。




「転校生のユーリだ。皆、仲良くするよーにっ」




 担任の簡単な紹介のあと、銀髪の彼は恭しく頭を下げる。
 その表情は、クラスの女子は疎か男子までもが騒ぐほどに妖艶な微笑で。

 一瞬だけちらりと視線があった彼は更に微笑んだ。




(なーんーかーたーくーらーんーでーるぅー…!!)




 彼から視線を逸らしたいのに逸らせずにいれば、後ろの席から小さく名前を呼ばれた。

 それは結構仲のいい友人、アッシュで。
 彼は興奮したように、ぼくに耳打ちする。




「スマ、スマ…!あの人すっげーキレーっスね…!」

「ぁー…ウン…………あの人、ちょーバイオレンス…」

「は?」




 ついでに言えば、ツンデレ。
 しかもね、あんなふうに綺麗に微笑っているけれど、実は結構な漢前なんだよ。
 でも、綺麗で可愛いからつい許しちゃうんだ…。

 そんなことを考えてるいると、アッシュは窺うようにぼくの顔を覗いてきた。




「……スマ……知り合いなんスか…?」

「まぁ、ネ…」




 正確に言えば、つい最近までは赤の他人で、ぼくは彼の存在すら知らなかった。
(彼の方はぼくを知っていたようだけど)


 だけれど、ついこの間、突然にそれは変わった。




「――で?なんで君がガッコに来ちゃってンのさ…?」




 昼休み、誰もいない屋上で転校生のユーリと2人っきり。
 だからと言って何か甘ったるいことがあるわけじゃない。

 彼はフェンスに寄り掛かったまま、地べたにしゃがみ込むぼくを見下ろして。




「わからんか?護衛だ護衛」

「……デスヨネ〜」

「これならば常に傍にいることができるし、周りにも怪しまれまい?」




 そう言う彼は、確かにただの高校生にしか見えない。

 但し、その学ランの下に隠している物騒なモノとか、彼の実際の年齢を除けばの話だけどね…!


 女子の制服を着た方が怪しまれないと思うよ。
 なんて言葉は口に出してしまう寸前で、なんとか飲み込むことができた。




「ガッコまで付きっ切りってことは、どっからか情報が漏れちゃったってコト?」

「さぁ…?」

「…ちゃんと教えてくんなきゃ、こっちは誰に気をつけたらイイか判らないじゃんヨー」




 ぼくの台詞なんて無視して、ユーリはくすくす笑っている。

 そんな彼にぼくは拗ねてみせるも、何の効果もない。
 それどころか、ガキ、と一蹴されて終わってしまった。




「お前は何も気にしなくていい。普段と変わらず、暢気に学校生活を満喫していることだな」

「……厭味かい?」

「私が護ってやると言っているんだ。下手な気を遣われて、こちらの仕事を煩わされても面倒だからな」

「…ごもっともで…」




 そう…。

 今までの話でなんとなく察するだろうが、彼は常にぼくの身の回りを護衛しているのが仕事で。
 だから彼はその為にわざわざこの学校に『転校生』という形で潜入してきたのだ。



 だって、彼はぼくのボディーガード。

 そして、ぼくは。




「こんなどうしようもない男でも、私達にとっては掛け替えのない次代のボスだからな…」

「どーしよーもなくてスイマセンねー。どーせまだガキんちょですカラねー」




 実はぼくは、
 何故だかある日突然、マフィアの次期ボスになってしまったんだ。
 いや、ホントに突然だ。


 ぼくは物心付く前から孤児の施設で育っていたんだ。
 自分に身内がいるのかも、本当の名前も、住んでいた場所も判らない。

 それでも変な道には逸れず、自分なりに真っ当に今日まで生きてきたつもりだった。


 だのに。


 それは突然だった。

 昨日、ぼくは知らない人達に半ば拉致られ、そこでユーリに出逢って。
 そして、自分の父親だという人にも逢い、唐突に「お前が次期マフィアのボスだ」なんてアホみたいなこと言われて。



 そんな馬鹿げた話、信じられるわけがなかったんだけど…。




「―――伏せろ」

「ェ゙」




 突然頭を上から押さえ込まれ、あと少しであまり綺麗とは言えない屋上の地面とキスをしそうになってしまった。

 だから、「危ないな!」と文句を言おうと顔を上げた瞬間。
 何かが頭上を掠めた。

 それをゆっくりと確認しようとすれば、ユーリがナイフを掴んでいて。



 アレが、飛んできた…の?



 と、理解するよりも先に、彼は掴んでいたナイフを前方へと素早く投げた。
 すると、その先で誰かが短い悲鳴を上げた。


 でも、あれだけではそれほどたいした致命傷を負わせられないだろうに、彼はそれ以上動くことはなく、相手も仕掛けてはこなかった。




「……殺ったノ…?」

「いや?」

「…よかったのかい?」

「まぁ、いいだろ。ここで死体を出すと処理も面倒だし、いい牽制にもなっただろうしな」




 そう言うユーリは何事もなかったかのように、イチゴミルクのパックへ手を伸ばしていた。

 ぼくはそれを、ただ呆然と見詰めるしかできなくって…。




(だって、もう慣れてきたし)




 昨日からずっとナイフやら銃やら、普通の人なら1度も本物を見ないで済むようなゴツい物を何度も見て、
 ついでに命も狙われた。


 命を狙われた時なんて銃撃戦になったんだよ?

 流れ弾が髪を掠っていったんだよ?
 前髪が焦げたんだよ?

 音なんて鼓膜が破れるんじゃないかってくらい凄かったし。

 それに比べたら、今日のなんてまだ可愛い方だ。



 だから、昨日の話で、

 あの黒髪の人が実の父親だということ、
 極普通の高校生だった自分が昨日からマフィアの一員になったということ、

 全部が全部、まだ信じられないけれど…。




(……こんなことに巻き込まれたら、信じるしかないカナァ)










日常の中の日常
(取り敢えず、これからはどうぞ宜しくお願いします)










「………それよりさ、護衛するならもっと優しくぼくのこと扱ってくれてもイイんじゃナイの…?」

「最低限は自分で護れるようになったらどうだ?」

「……………努力シマス…」







+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+





案外難産でしたこの話…;;

いや、すぐ書けると思ったんですが…………どこまで掘り下げて書こうかなと思ったらなかなか進まなくて;;


ホントは最初、スマが拉致られたところから書き出してたんですが逆に纏まらなそうだったんで、はしょった!
それでも長いネ!これ以上短くするのは無理でしたッ★orzorz


でもでも!
楽しかった!ドンパチやらせたかった!




10,07,15




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あきゅろす。
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