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駄文
変化 (スマ)

 伸びていく髪。

 伸びていく爪。

 ちょっとだけ、以前より伸びた身長。

 少しだけ変わっていく顔付き。
 お肌なんかも、ちょっと…ね。

 そういえば、ほんの少し…ほんの少しだけ、太ったかな。



 そんな些細な変化。
 当たり前すぎて今更な、確かな変化。

 変わって当たり前。
 成長して当たり前。
 変化があって、当たり前。

 生きているから。



 だけど。




「貴方は変わらないのね」




 小さな村に、ひょっこりとやってきた旅人。
 見たことのない模様の描かれた外套に身を包む、不思議な雰囲気の優男。




「なにが?」




 いつだってへらりと笑っている彼。

 正直、最初は嫌いだった。
 苦手だった。

 だって、真実を何も言わないくせに、なんでもお見通しな隻眼をしているから。




「なんでもないわ」

「おや。今日は不機嫌なんだねぇ」




 今日もいつものように笑う彼は、私のお店へ。

 他愛ない話をして、他愛ない時間を過ごす。
 いつしかその他愛のなさが居心地よさに変わる。


 そうして数年、彼はこの村に滞在して、
 一緒にいる時間が増えて。



 だけど、全く変わらない。



 彼の容姿は。



 だって、彼は――…。




「…本当に、私達とはなにもかもが違うのね…」




 そっと、頬に触れた感触も、
 温もりも、
 感情も。
 心も。

 何1つとして違うところなんてないのに、貴方はヒトとは明らかに違う。




「………怖いかい…?」




 少し悲しげな隻眼も、ヒトと何が違うのかしら。
 不安げに私から距離を取る、捨て猫のようなその姿も、いったい何が違うのかしら。

 違うところなんて、ないじゃない。


 ただ、少し。




「…怖くなんかないわ。
 ただの、弱虫な子供にしか見えないもの」




 時の流れが、そこに存在しないだけ。












 伸びていく髪。

 伸びていく爪。

 ちょっとだけ、初めて会った時よりも伸びた身長。

 少しずつ大人っぽくなっていくその顔付き。
 よくわからないけれど、肌を気にしていたな…。

 そういえば、ほんの少し…ほんの少しだけ、太ったかなと言っていた。



 そんな些細な、君の変化。
 当たり前のような、変化。

 だけどぼくにはない、当たり前。

 その変化が、ぼくは、怖かった。



 君が、変わっていってしまうことが、怖かった。



 だってぼくは、君とは………ヒドとは違うから。



 その事実を告げることも怖かった。
 だって、告げてしまえば、知らなかった頃には戻れない。




 でも君は。


 気付いた。




「貴方は変わらないのね」




 それでも。




「…怖くなんかないわ。
 ただの、弱虫な子供にしか見えないもの」




 君は、受け入れてくれた。




 変わっていく君と、変わらないぼく。
 なにもかもが違っていて、だけれど確かに同じで。

 ぼくは、違うことを恐れて、
 けれど君は、違うことはないと笑った。



 そうしてぼくは、ヒトに触れて、君というヒトを知り、

 ただ一緒に、これからを歩んでいこうと、

 2人笑い合ったけれど。






「――――……っっ…」






 君は、焼かれた。



 妖怪と交わった、魔女だと。




 ぼくは、ぼくが妖怪だということが知れ渡り、村人から虐げられた。
 そんなことはどうだっていい。
 慣れたから。


 だけれど。



 彼女を焼くことは、違うんじゃないだろうか。
 彼女は、君達と同じ、人間なんだろう。

 だのに、何故。

 どうして。


 笑っているんだ。


 何故、彼女が悲痛な悲鳴を上げ、焼かれている様を、
 愉しそうに皆で囲っているのだろうか。




 理解ができなかった。




 だから、




「――…死ねよ…」




 殺そうとした。
 村の奴等、全員を。

 共に、笑い話で盛り上がった村の大人を。
 ぼくの音楽を喜んだ村の子供を。
 一瞬だけでも、ぼくを受け入れてくれた村人を。

 全部、全部。

 殺してしまおうと…。


 彼女の仇を取ろうと。



 妖怪の自分なら、造作ないことだから。




 でも、ね。




『……ありがとう…』




 君が、呟いたから。




『私を……人間を、愛してくれて…』




 君が、遺してくれたから。




『ありがとう』




 ヒトを、愛する気持ちを。




 だから、ぼくは何もできなかった。
 結局、村から姿を消して、泣きながら逃げただけだった。



 だって、もう……

 人間を、憎めなかった。

 何が違うのか、判らなかったから。


 人間は、彼女と同じだから。
 彼女は、ぼくを人間と同じだと言ってくれたから。




 ぼくは、

 ヒトが……人間が、


 愛しい者だと、知ってしまったから。




(妖怪を忌み嫌う、非力で低脳な、卑小なもの)


(だなんて、もう…思えなかったんだ)




 それは、いいことなんだと思う。
 変わらない概念が、変われたのだから。

 永い間変化のなかったものに、変化が訪れたのだから、それは確かにいいことなんだ。



 だけれど、

 君を、護れなかった。



 君と出逢ってしまったから、君を失ってしまった。

 それは、あってはならない変化だっただろう。
 そうだったに、違いない。


 でも、君は、
 ありがとうと、呟いた。

 ぼくに、呟いたんだ。



 それは……、

(赦してくれたということだろうか)

 それとも、

(最初から、そんなこと関係なくて)

(ただ…)




(共にいられたことが、幸福せだったから)




(ほんの一瞬でも、確かに愛し合えたことが、幸福せだったから)




 だから君は、



 最期に笑ってくれたの?






「……ありがとう…」






 あぁ……、

 真実を知ることは、もう決して、叶うことがないけれど。




「ありがとう」




 君に出逢えてよかった。

 君と共にいれてよかった。

 君を知れてよかった。

 君を愛せてよかった。



 変わることができて、よかった。












 伸びない髪。

 伸びない爪。

 伸びない身長。

 少しも変わらない顔付き。
 肌なんかも。

 体型だって、変わらない。



 些細な変化もない、ヒトとは違うぼく。
 だけれど、確かにヒトと同じぼく。


 昔は嫌いだった。
 妖怪を嫌う人間が。

 妖怪とは違う人間が。

 彼等はすぐに老い、死んでしまうから。


 だけれど、
 それはぼくが勝手に決め付けていた違いで。

 本当は、生きていて、命があって、何も変わらない。

 根本的なことは何も変わらない、愛おしい者だと知った。



 ぼくは、確かに変わることができた。




「私は……お前とは違う」




 だから。




「私とお前は、なにもかもが違うんだ…!」




 さぁ、今度はぼくが教えてあげる番だ。




「ユーリ」







End.





+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+





たまには、こんな小説もいいかな、と。
思い付きで書き殴りました(´∀`*)


やっぱり妖怪と人間は違うから、だから憎んだり、解り合えなかったりするんだろうな。
確かに違うし、それが恐ろしさに繋がってしまうから。

でも、もし、同じなんだと。
同じ、命のある者なんだと、簡単だけど見落としてしまいがちなことに気付けたら。
ただ、それぞれ性格が違うように、人間と妖怪の違いがあるだけなんだと気付けたら。

少しだけでも解り合えるんじゃないか。
少しだけでも、ほんの僅かでも、愛しさが芽生えるんじゃないか、と。

そんな、変化……というか、価値観というか………そんなテーマで書きたくて、人間のオリキャラを出してみました。


だって、長く生きていて旅をしていれば、スマにもこんな人が現れて、その人の影響でヒトを知って、今に繋がっていたりするんじゃないかって。

そして、ヒトと自分……その違いが、今度は逆の立場でユーリと自分に当て嵌まって。
ヒトと比べたらスマは永遠のような時間を生きるけど、まさに永遠を生きるユーリに比べたら、スマはまるでヒトのようだから。
だから、自分が気付けたことを、変化を、今度はユーリに与えてあげたい。気付いて欲しい。


そんな、お話でした。



………うん、難しい。
実際自分は人間だからね!((笑笑!



そして、これは一応スマユリなんだけど、完璧なオリキャラを出しちゃってスマユリ文に置けなかったので駄文行き((笑笑!




10,04,22




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あきゅろす。
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