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桜並木の下で
3-2


「はぁ……ホント、ヒドイ目に遭った…」




 昼休み、昼食を終えた生徒で賑わう廊下。

 ぼくはそんな中を、辺りを気にしながらカロリーメイトを咥え、歩いていた。

 ちょっと挙動不審と思われようがこの際仕方がない。
 だって、一瞬たりとも気を抜けないんだから。




(昨日もずっとあの子に振り回されまくったからなぁ…)




 そう…ぼくは、昨日の朝からずっとあの子……かごめという、クラスメイトである女のコに振り回され続けているんだ。
 寧ろ、引きずり回されている。

 んで今は、彼女から漸く逃げ切れたところ。


 何を気に入られたのか全く解らないが、彼女には大層気に入られてしまったようだ…。


 だってぼく、ここに転校してきてまだ1週間程度しか経っていないんだよ?
 それなのに、1度も話したことない子に気に入られるとか考えないじゃないか。

 てゆかあの子、一見大人しいように見えて結構バイオレンスだからね…!
 ユーリみたいだけど、ユーリとは違って容赦ないから恐ろしい。(ユーリも容赦ないけど…)



 いや、1番の問題はそこじゃなくて…!




「……またシカト…!!」




 耳元でお留守番センターに繋がった通話を半泣きで切る。
 これで何回目だろうか。

 昨日のあれから、ユーリはぼくのことをずっと避けている。
 避けているっていうか、目が合ってもスゴイ不機嫌な顔をされる…。

 …や。そうだよね、解ります。解りますよ。
 当たり前だよね。



 だ け ど … !




(メールも電話もシカトで、挙げ句半径1m以内にすら近寄らせてくれないだなんて…!)




「ユーリが足らなすぎて死にそうだヨ〜…」




 大好きなあの子に繋がらないケータイをポケットへ戻し、盛大な溜息を吐きながら窓に額を押し付ける。
 そうすればひんやりとした冷たい窓が幾分か気分を変えてくれた。




(…………ぁ、)




 そんな時、ふと目に付いた黒髪。
 それは、昨日からぼくを振り回し続けてくれている女のコで。

 その子は、中庭の木陰……辺りからは丁度死角になっている所にしゃがみ込んでいた。


 ぼくは疲れなど忘れ、興味本位でそんな彼女を見詰める。

 すると、その子の白い手の中に、小さな青い鳥が収まっているのが僅かに見えて…。




「ぉ?なにしてンだ?」

「ン〜?」




 聞き覚えのある声につられ振り返れば、そこにいたのは珍しく楽しそうにしているザイン。
 廊下の窓からぼくと同じように中庭を眺めていた。




「や〜?ぼくは別に…」

「ぁ?」

「ところで、君の方こそこんな所でナニしているのサ?」

「オレ?オレは、あれ」




 咥えたストローで指したのは中庭の、さっきまでぼくが見ていた所からは少し離れた場所。

 そこではルリが中庭の木を無言で見上げていて。
 僅かに右往左往している様が小動物のようで可愛い。




「さっき、窓から人形落として木に引っ掛けたんだよ」

「…助けてあげないのかイ?」

「いや、つい…」




 そう言いながらザインは、枝の上に引っ掛かってしまったパンダをぼんやりと見上げるルリを楽しそうに眺めている。


 ホント…楽しそうですね。
 なんて思っていたら、ザインが何かを思い出したように声を上げた。

 それにつられ、もう一度彼を見遣る。




「そーいやお前、ユーリと別れたンか?」

「――ンぶッッ…!」




 危うく、咥えたままだったカロリーメイトを落としそうになってしまった。
 だけど、ザインは悪びれた様子もなく先を続ける。




「昨日帰り一緒に寄り道したら、ユーリとシオンがべったりくっついてて『今日から付き合う』とか言ってたし、ユーリが不機嫌そうにしてたからさ」

「…………」




 誤魔化すようにニコニコとしていたが、流石従兄、小さい頃からの付き合いである彼にはお見通しのようで、
 ザインはルリを眺めながらカラカラと笑い、そして。




「なんかあったンなら、いつものウザさで当たって砕けろよ」

「砕けるのかい………てゆか、今ウザいって…」

「ユーリはあの性格だぞ?」




 ザインは、不機嫌な顔をしてこちらへ来るルリに軽く手を振る。

 そんな彼を眺めながら、ぼくはカロリーメイトを飲み込んで。




(……そっか…………そうだよネ)




 いつだってツンケンしているあの子を思い浮かべれば、途端に笑みが零れる。




(…あの子、素直じゃナイからね…………やっぱココは、いつものぼくで行くべきだ)




「ぼく、ユーリ捜してくるー」

「んー?おー」




 笑って見てるなと、ルリに殴られそうになっているザインに手を振り、駆け出す。


 やっぱりさ、メールとか電話に頼らず、直接話さなきゃね。
 距離を取られているからってなんだ。

 そんなの、お構いなしでしつこく行くのがぼくだ。

 とにかく、昨日から構ってあげられなかったことを詫びて、
 素直じゃないあの子を『それはシットですか?』とからかってやろう。


 そうすればきっと、いつの間にかいつものようになっているさ。




(面倒臭いコトを考えるのはナシだ)




 ぼくはとりあえず、シオンとの浮気は止めさせなければと、教室へ向かった。







 そんなぼくが、教室へと駆け出すのとは逆の方向で。




「…………」




 ユーリは中庭を見下ろし、ただ無言で見詰めていた。

 かごめと、その掌の中の、小さな青い鳥を。






To Be Continued...












お待たせ致しましたー…!!orzorz
漸く書き上がりました、前回の続き…!

やっぱり当初の予定より長くなりそうです。
思ったようにキャラが動いてくれないwwwまぁ、それはちゃんと考えないミズチの所為ですがwww(^q^)

あと2話くらいですかね?


ありがとーございま!!!!




それにしても、紫黒が出張りすぎwwworz




01,07,03




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