桜並木の下で
2-15
朝。
柔らかな陽射しを浴びながら、満開を通り越した桜がはらはらと辺り一面に花弁を散らしていく。
ぼくは、バイクを駐輪場とは少し離れた場所に停め、
だけど、桜が見たくなって少し通り道をしてから校舎へ向かうことにした。
だって、なんだか勿体ないから。
桜は、今の時期しか見られないでしょ?
だから、見れる時に思う存分見ておかなくちゃ。
まだ少し早い時間だからか、登校してくる生徒は疎ら。
その静かな雰囲気が相俟ってか、薄紅色の桜が余計に儚く見えた。
そんな時。
「――そこの変態っ」
桜の根本辺りに来たら、突如頭上から声がした。
その納得いかない呼び名に決して反応したわけじゃないけれど、まだ声変わりをしていないようなその高い声は聞き覚えのあるそれで。
だから、つられて頭上を仰げば、木の枝から猫のような軽やかさで目映い金が目の前に飛び降りてきた。
「おや」
ニコリと笑ってやると、彼――シオンは俯かせていた顔を真っ直ぐとぼくへ向けた。
その顔はやっぱり不機嫌そうな眉を顰めた表情。
相変わらずぼくを敵視したような碧眼で睨んでいた。
「オハヨ」
「………………はよ」
おや?
挨拶が返ってきた…。
てっきりシカトされるかと思っていたのに。
視線は少し逸らされてしまったけれど、予想外の進展に自然と口許が緩んでしまった。
「………ンだよ」
「イーエ?」
尚も笑っていたら、相当嫌そうな顔をされてしまった(笑)
「シオン君、早いんだねぇ」
まだ8時にもなっていないよ?
話し掛ければ彼はまた少し視線を逸らし、口をもごもごとさせていた。
それが何かを言いたそうで、ぼくは黙って彼の言葉を待つ。
すると少しだけ風が吹き、シオンはそれを合図にしたようにゆっくりと口を開いて。
「やっぱお前、大ッ嫌い」
真っ直ぐぼくを見詰め、
でも…と、呟き。
「……ユーリが、楽しそうだから…………認めてやる」
蒼い双眸はまるで、空の色。
何処までも鮮やかに澄んでいて、綺麗で、純粋で。
嘘を嫌うような、偽りを赦さない、そんな色。
「でも、絶対にユーリはやらないからな!」
それはきっと、ぼくの脇を駆け抜けて何処かへ行ってしまった、彼そのものの色。
彼の眩しい金を追い掛け後ろを振り返れば、そこにはそれよりも眩しい銀があって。
「ユーリは、オレんだからなーー!!!!」
そう叫んで、シオンがユーリに抱き着いていた。
登校してきたばかりのユーリが当然この状況を理解できるわけなんてなくて。
突然抱き着いてきたシオンと、突っ立っていたぼくを交互に見遣りながら小首を捻ってしまっている。
そんな彼に、ぼくはニコリと微笑ってやって。
「違うって!ユーリはぼくのだし!」
ぼくも駆け寄って、思いきりユーリに抱き着いた。
だけどその重さはユーリには堪え切れなくて、3人一緒に倒れてしまった。
それが可笑しくてぼくはカラカラと笑い、
シオンはぼくに向かって舌を出し、
ユーリは目を廻す。
少し離れた処で呆れ顔のザインとルリと、興味なげに欠伸を漏らすコウを見つけ、
ぼくは暫く、馬鹿みたいに地面の上で笑い転げていた。
その時ぼくは、
シオンがいた桜の木とは別の木から誰かがこちらを見ていたなんて、
全く気付かなかった……。
「――スティルっ」
相変わらず薄暗い部屋でパソコンに齧り付いたままの、自分よりも少し広い背中に抱き着く。
そうすれば彼は不思議そうな顔でこちらを振り返った。
「…アレ?ラスネール、学校に行ったんじゃなかったの?」
「行ったよー。でも帰ってきちゃったー」
甘えるように擦り寄って、彼の肩越しに見た画面はイマイチ解らない文字の羅列。
たぶん、また、何処かのサーバーを暇潰しがてらにハッキングでもしていたんだろう。
「あいつ、いたよ」
ヒヒッと笑うと、スティルは一瞬目を逸らして、だけどすぐに、あぁ…と漏らした。
「ボクのなのに、全部取っていこうとするの。
酷いと思わない?」
離れたボクを、スティルは黙って見詰める。
ボクは大好きな人形を抱き締め、その首に鋏を突き付けて。
「ほんと、だぁいっきらい」
ニッコリ笑ったまま、首をちょん切ってやった。
……覚悟、しておけよ?
To be continued...
金が少しだけ大人になったと思ったら、また子供が出てきます。
しかも性質悪い子ww(´∀`*)
実は、ラスが出てくる話は全く考えてませんでしt((殴ww
次は紫黒か蒼翠に行こうと思ってたので←
…………さて、どうしようか。
閑話休題的に、スマユリから離れてみるか……このままヤンデレ出すか…←←
どれを選んでもすぐ終わらない悩む…orz
皆さんは何が読みたいでしょうか…。
大穴狙って白水?黒赤??←大穴か?笑
とりま、暫く悩んでみます……答え出なそうだけど…(^q^)w
10,01,25
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