桜並木の下で 2-8 「……で?お前はシオンの約束を破ったというわけか…」 そう呟いて、ぼくを肩越しに振り返りながら溜息を吐いた。 ぅっわ…!ユーリちゃん、ヒッドイ! 今、明らか軽蔑したデショ?! 「だって!恋人であるユーリを優先するのは当たり前デショ!」 「だからって、約束を破るなど…」 「約束っていうか、強制されたようなもんなんだケド…」 肩を落としたまま呟けば、ユーリは歩きながらもぼくをもう一度振り返り、そして深く溜息を吐いた。 そんな………確かにぼくが悪いことをしたって判ってはいるけれど。 大体、面識のない人の呼び出しにおいそれと行く人なんていないと思うよ? (まぁ、ユーリの弟だって聞いていたけど……) ユーリが最優先だもん。 ぼそりと漏らすと、ユーリがまた呆れた顔をした。 うぅ………今、絶対ぼくに対する評価が下落してる…。 「ユーリ、ゴメンてー!」 「……私に謝られてもな…」 「あの子にも後でちゃんと謝るから許してお願いー!」 ぼくはもう半泣きで、廊下の真ん中に突っ立ったまんま顔の前で手を合わせ、頭を下げた。 もうこの際、羞恥心はどっか行った。 そんなことよりもユーリに嫌われてしまうことの方が辛い。 いつの間にぼくの中でユーリがこんなにも大きくなっていたんだろうか…。 ふと浮かんだ疑問は、今は深く考えないでおく。 それどころじゃないし。 「ホントすみませんでした!」 朝の廊下、切羽詰まったぼくの声で微かにざわつく中、 たったの5秒くらいその体勢を続けていた。 だけど、ユーリからは全く反応がなくて、ぼくは柄にもなく凹んでしまった。 あぁ……どうしよう。 ぼく、ユーリに嫌われたらこの先絶対生きていけないよ…。 まだ呆れているかな…、恐る恐る目を開けて彼を窺う。 と。 「ほんと……恥ずかしい奴」 ぽん……と、ぼくの頭を撫でて。 ユーリが、微笑った。 再び周りで微かに起こるざわめき。 でも、そんな周りを牽制することも忘れ、ぼくはもう背を向けて教室に入ろうとするユーリを見詰めていて。 ぼくよりも小さな背中。 華奢な躯。 ぼくよりも低い体温。 でも、ぼくよりも何かが広くて、優しく温かくて。 「ユーリ!大好きだー!!」 気付けばぼくは叫んでいた。 そして、顔を真っ赤にして振り返った彼に、ぼくは満面の笑みを浮かべたまま抱き着いた。 や………だって、何その可愛さ。 反則でしょ。 ぼく、誰かを子供扱いしたことあるけど(喧嘩の挑発とか寄ってくる女のコとかを)、 でも誰かに子供扱いされたことなんて今までなかった。 ましてや、惚れた子になんて。 なんだかその感覚が擽ったくて、思わず叫んでいて。 「はぁ……ヤッバイ。……めっさハマりそう…」 「は?」 ユーリに殴られた頭が痛いけど、それ以上に何とも言えない所がむず痒くて、もどかしくて、 ぼくはユーリの体に後ろから抱き着き、その薄い肩に顔を埋めた。 (まぁ、教室に入る寸前で鳩尾に肘鉄を喰らったのは言うまでもないかな) ぼくは、思った以上に、彼にハマっていたみたい。 まだ出逢ってほんの少ししか経っていないのに、不思議と、もうずっと前から一緒にいる感覚がする。 教室に入って、アッシュ君と魔女に微妙な目をされても浮いた笑みを引っ込めることはできなかった。 そんな時、賑やかな足音が廊下の方から近づいてきた。 スマユリっぽい場面なくね?と思って書いたら、 何故かユリスマ臭くなった不思議w 桜並木の学パロはどうやら、スマがいつも以上に子供になるようです((笑笑! はい、次回からもグダグダで、いろいろ騒ぎまくります★ 09,05,19 [*前へ][次へ#] |