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桜並木の下で
2-7


 いつもと同じ、穏やかで、まだ少しだけ肌寒い春の朝。

 毎日と同じ光景がゆっくりと脇を流れていくけれど、今日はいつもと少し違った。




「〜♪」




 隣を見ると、上機嫌のシオンが時折首を揺らしながら鼻歌混じりに歩いている。




「……くすっ」

「?ユーリ?」




 つい笑みを漏らせば、彼は不思議そうな顔で小首を傾げてきて。

 そんな彼に、なんでもないよと返す。
 彼は少しだけ訝しむが、「ふぅん?」と呟いてまた前を向いた。



 時折、自転車に載った生徒が私たちを追い越し様に、
 そして歩いている生徒が私たちを追い抜き様に、私たちを何度か振り返る。


 ……そんなに珍しい光景だろうか。


 はてと思い、首を傾げた。



 まぁ……確かに、私とシオンが並んで登校するなど、あまりないからな。

 彼が寝坊しないで、学校へ真っ直ぐと行く気にならない限り。
 (寝坊しなくても、大概が道草をして遅刻していくから)




 希望すれば確かにエスカレーター式で、附属の大学へも進めるが、
 成績は勿論、多少なりとも出欠席や、遅刻の回数も重視される。


 このまま彼が改善しなければ危うい気もするが……。




 隣で上機嫌に金糸を揺らすシオンをまた眺め、私はふと苦笑を漏らしてしまった。




「私はお前にほんと甘いな」




 聞き逃した彼が「ぇ?なに?」と訊き返してくるが、私はそれに頭を撫でてやるだけで曖昧に首を振った。

 それでも気になるらしい彼は私を見詰める。


 でも、教えてあげない。




 そんなやり取りを繰り返していたら。





「ユーリっ!ぼく以外とイチャついちゃダメーっっ」

「ぅわっ!」

「ぅお?!」





 いきなり後ろから誰かに抱き着かれた。
 私の声に、つられてシオンも驚く。



 ……と言っても、こんなことをするのは1人しか思い浮かばず、私はすぐに溜息を吐く。
 (声も聞こえたし)




「……朝からなんだ?お前は」




 肩を抱くように回された腕を抓ってやれば、耳元で「いたたた」と声がする。


 そうして、彼が漸く私を解放し、隣に来て独特な笑みを向けた。




「だって、朝からユーリったら、ぼく以外の奴となんか仲良く歩いているんだもの」




 そりゃ、妬くよ。


 なんて、子供のように唇を尖らせる。



 はっきり言っておくが、可愛いとは思えないからな?




「ユーリはぼくのデス」

「馬鹿か。大体、仲良くって当たり前だろう?
 スマイル、こいつはな…」

「……………てめぇ、」

「「は?」」




 まだ紹介をしていなかったスマイルに、シオンのことを言おうとした時。

 私の後ろから、微かに震える声が聞こえた。



 その声に、スマイルと声を漏らし、振り返れば。





「………っ、」





 シオンが、何故かスマイルを睨んでいた。

 形のいい眉を寄せ、唇を噛み締める様は、今まさに彼に掴みかかりそうな勢いだ。




「……シオン…?」




 彼がそうする理由が解らず、名を呼べば、毛を逆立てた猫みたいに威嚇するシオンが口を開いた。




「てめぇが、スマイルか…?」

「そぉだけど……ソレが?てか、君は?」




 飄々としたスマイルだが、流石に状況が状況なだけに、変な挑発はせずに答えていた。


 すると、シオンは私の腕をくん…と引いて。





「オレは、お前に手紙を出した……ユーリの弟だよ」





 それを聞いた途端、スマイルは「ぁ」と漏らし、顔を引き攣らせた。



 ………なに?

 お前たち、私の知らない間に何か交流でも深めていたのか?と、問おうと、シオンを振り返った時。
 彼の怒りは頂点に達したらしく、頬を赤らめ、息を詰まらせた。


 そして。




「……っ、てめぇなんかにユーリは「っはよー、シオン。これ貰ってくなー」




 声を張り上げ、スマイルに手を伸ばしかけたその時、
 自転車を漕ぐ誰かがシオンの鞄を攫っていった。





「………へ?」





 その場で私たち3人は固まり、ふと自転車が去っていった方向を見遣る。

 そこには、こちらを振り向きもせず、赤毛のその男がシオンの鞄を空に向けたまま遠ざかっていく姿が見えて。



 暫し、呆然とし。




「……っあぁあ!コウ!……バカヤロー、オレの鞄引ったくるんじゃねーよ!!」




 そう叫んで、シオンは彼……アッシュの兄であるコウを追い掛け走り出した。



 ……あ、あぁ………あれは、コウだったのか…。




 すると、シオンは思い出したように立ち止まり、こちらを勢いよく振り返った。

 そしてビシッ、と、私の隣を指差し。




「覚えておきやがれよこの包帯野郎!」




 …人を指差してはいけません。


 そう言う間もなく、シオンは今度こそコウを追って走っていってしまった。



 いつの間にかできた人だかりの中心で、私たちも暫く呆け。





「とりあえず、教室に着いたらお前たちに何があったのか詳しく聴かせてもらおうか」





 穏やかに吹く春風の中、静かに呟けば、

 隣でしらばっくれようとしていた男はぴくりと身を揺らし、「アハハ…」と笑っていた。












……………飽きt((殴ww


や。全く進まず1年経ったなぁ……って……orz



次の話から、金がスマと喧嘩しだすかな?




09,04,18




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あきゅろす。
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