桜並木の下で
1-13
「………大丈夫か?アッシュ…っ」
「――っつー……俺は大丈夫ですけど……」
頭を摩りながら上体を起こしたアッシュの隣へ慌てて飛び降りると、アッシュは自分の上に被さっている碧い髪の彼を見下ろした。
彼は目を回したままぴくりとも動かない。
「……この人の方が、大丈夫じゃなさそうっスね…」
「……………そのようだな……」
微かに嫌な汗を背中にかきながら彼から視線をずらし、アッシュを見れば、アッシュは頻りに頭を摩っていた。
頭同士をぶつけたのだろうか…。
そうだったなら、彼が頭を地面に打っている心配は余りしなくてよさそうだが、やはり気になる。
私は体を揺らさないよう気をつけ、彼の頬を音がしないほど軽く叩いた。
「……おい、大丈夫か?………おいっ」
「とにかく、保健室に連れて行きましょうか…」
打ち所が悪かったら大変ですし。
そう言ったアッシュに頷き、立ち上がると、アッシュは彼を担ぎながら立ち上がった。
………彼は大丈夫だろうか…。
私はアッシュの前を歩きながら、そればかり考えていた。
「ただ目を回してるだけみたいだから大丈夫でしょう」
「そうっスか!ならよかったっス」
保健医であるハニー(本名だろうか…)の言葉を聞いて大袈裟に安堵して胸を撫で下ろしたアッシュの隣で、私も知らず安堵の溜息を漏らした。
「暫く寝かせておけば、そのうち目を冷ますと思いますわ。」
「お忙しい中すみません…。有難うございました」
「気になさらないで、ユーリさん。これがお仕事なんですから」
ふふっと楽しそうに笑ったハニーにもう一度頭を下げ、彼が横になっているベッドを隠すカーテンを引いた。
そこには、未だ気を失い眠っている彼の姿。
そのベッドに近付き、そっとカーテンを閉ざした。
「そういえば、何故あの場にお前がいたのだ?」
もしかしたら会話を聞かれていたかもしれない。
もしそうであったら、微かに気まずいな…。
そう考え、一緒にカーテンの中へ入ってきたアッシュに問えば、彼はまだ頭を摩っていた。
「あー…それは、ユーリがいないなんて何かあったに違いない!とかって先生が騒ぎ出して、それで俺が捜しに行かされたんですよ」
ここかなーなんて屋上に来て扉を開けた途端、この人が降ってきたんでビビりましたよ。
そう苦笑したアッシュ。
彼は嘘を吐くことが苦手だから、これは事実だろう。(だって、嘘を吐くのが下手だからな……顔に出るし、妙に落ち着かなくなるし…)
だから、これは会話を聞かれていなかったと思って平気のようだな。
未だ頭を摩るアッシュに、私はそれは済まなかったなと苦笑を返した。
「あ、じゃあ俺、先に教室に戻って先生に『ユーリは付き添いで保健室にいた』って伝えときますね」
「あぁ…頼む」
私が今はあまりクラスに戻りたくないことを察してくれたらしいアッシュは、人懐っこい笑みを浮かべて出ていった。
そしてその後、ハニーも少し用事があるからと部屋を出ていった。
そうして私は、この静まり返った保健室で、彼と2人っきりとなった。
眠すぎて、誤字脱字が激しそう…………orz
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