桜並木の下で
1-7
ユーリが出ていってしまったドアを2人で暫く見詰めていると、ふと、アリアがくすりと吹き出した。
「ユーリってほんとにからかい甲斐があるわよね〜」
「だからって、アリア……虐めすぎ…だよ」
「イイじゃない♪これも愛情表現よ、愛情表現♪」
でも、さすがにあれは…と渋面を作れば、彼女はくすくすとやはり笑った。
「ところで、兄様とシオンにはユーリが誰かと付き合ってるなんてデマ、行ってないわよね?」
「うん……たぶん、ね」
行ってたら私よりも早く帰ってきて、もっと騒ぎになっていたよ。
そう呟けば、アリアは確かに…と苦笑した。
「とりあえず、あの2人には黙っとかないとね。
ルリ以上に、ユーリにご執心なんだから」
「そ……だね」
2人が取り乱しながらユーリを問い詰めている様が容易に想像できるもの。
つい、先が思いやられて、溜息が漏れてしまった。
もとより、ここの屋敷の者は自分も含め、皆してユーリに執心だ。
何故だろう…。
今までそんなこと考えたことなかったからよくは解らないが、たぶん、彼が1番に家族を想い、大切にしてくれているからだろう。
それも、自分のことなど簡単に犠牲にしてしまい、見ているこちらが痛々しく思えてしまうくらいに。
だから、そんな優しすぎる彼が皆、至極愛しくて、仕方がないのだろうな…。
(あの子は人一倍、損な性格だから余計にね…)
そう物思いに耽っていると、訝しそうに小首を傾げたアリアが私の顔を窺っていた。
そんな彼女に頭を振る。
「じゃあ、私……少し、出掛けてくるね…」
「こんな時間に?」
「ちょっと…ザインの処に……ね」
あぁ、彼ね。と笑う彼女に、ちゃんとユーリの機嫌とっといてね…と呟いて、頭をぽんと撫でてやる。
「オーギュストに…私の分の夕食は……作らなくていいから…て、伝えといて」
「わかったわ。いってらっしゃい」
シャトルーズグリーンの髪を揺らし、コロコロと笑いながら手を振るアリアを一度振り返り、私はリビングを出た。
他の人は、全く感じていないらしい、1つの予感を胸に抱きながら。
たぶん、本人ですら気付いていないであろう……それ。
(…………嫌だなぁ)
そう胸中で呟いて、私は西の空へ完全に姿を隠そうとしている太陽に照らされながら、歩き出した。
蛇足的な何気ない話も結構好き★
黒ユリだけが気付いた、ちょっとしたユーリの変化。
個人的にここで金ユリと赤ユリを出したかったんですけど、終わらなそうだったから止めました。
だって…………いつまで経ってもスマとユーリがくっつかない((笑。
ぶっちゃけ、「ザインの処に…」て、黒ユリに言わせたかっただけ((殴。
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