桜並木の下で 1-5 空よりも澄んでいて、 海よりも深い、紺碧の色。 そして、微かに暗い色をした、赤。 その2つの色とあの笑みが、頭にちらつく。 『ぼく、スマイルって言います』 『一目ボレしましたッ。ぼくと付き合って―――』 「ユーリ!!!」 「「?!!」」 突然、バンッと激しい音を発てて扉が開けられた。 弾かれたように扉の方を2人で見遣れば、そこには黒髪のルリがいた。 しかも、普段は穏やかな彼からは想像が付かないほどに、1つ年上の彼は息を荒くさせている。 「る……ルリ?一体どうしたのだ…?」 「そうよ……珍しくそんなに慌てて」 何かあったのか?と問えば、彼は私を見詰めた。 そしてそのままこちらへ歩み寄ってくる。 はっきり言って、少しだけ怖い。 だって、こんなにも怒っている彼を見るのは初めてなのだ。 何かしただろうか…と思う間にも、彼は私の目前まで歩いてきて。 そっ…と、予想していたよりも優しく、顔を彼の両手で挟まれる。 私が、ルリの瑠璃色の瞳を見詰めながら、彼の名を呼ぼうと口を開きかけた、その時。 「今日…、恋人が、できたって………ほんと?」 「はぁ?」 「えぇ?!」 隣には驚きの声を上げながらも興味に瞳を輝かせるアリア。 そして、目前には冗談を言っているとは到底思えない、至って真面目なルリ。 あぁ…これは一体、どうしたらいいのだろう。 「というか、ちょっと待て、ルリ」 「……待ってる、よ」 答えてくれないのはユーリの方だと、いつもの穏やかな口調で話す。 どうやら、少しは落ち着いてくれたようだ。 だが。 「ねぇ、ちょっと!恋人できたってほんとっ?ユーリ!あんた今まで誰とも付き合わなかったのにどうしてっ?相手はどんな子っ?可愛い系?キレイ系? ねぇ、ユーリったら!」 眼をキラキラと輝かせながら、アリアの質問責めが始まってしまった。 「アリア、落ち着け…」 「あたしは落ち着いてるわよ?」 さぁ、全部吐きなさい。なんて、にっこり笑顔で詰め寄る。 ルリに助けを求めようとしたが、彼は真剣な顔で同じように詰め寄ってきた。 どうやら、開放してはもらえないらしい。 はぁ。と、今度こそ観念して溜息を吐いた。 「ルリが学校でどんな話を聞いたかは知らないが、私に恋人はいないよ」 詰め寄る2人の体を離しながら話し出せば、 2人は各々に、少し安心したような顔とがっかりしたような顔をしていた。 ルリ登場★ [*前へ][次へ#] |