はじまりはこの場所で(Side:M) 出会いは、グラウンドで。 大した期待もせずに中学でやってた野球を高校でも延長みたいな感じでやろうと、足を運んだグラウンド。 そこで、初めて君に会った。 まだ伸ばし途中のような髪。日焼けの所為でできたのかなと思えるそばかすと。男にしては大きな黒目のぱちくりさせてる目が印象的だった。 ここにいるってことは同じ部活に入ろうとしてるってことだよね。なら、声かけて早速友達作りに励んでみるのもいいかも。だっていずれはチームメイトになるわけだし。 そんな軽いノリで傍に寄って声をかけた。 「ねぇ、野球部入るの?」 「ん?あぁ、そのつもり。そっちは?」 「ん〜、オレもそのつもり」 まだ声変わり途中のような声で答えてくれた目の前の子は少し笑った。いや、愛想笑いかな。まぁ、初対面だし、当たり前だよね。 「あ、オレ水谷っていうんだ。よろしく〜」 「オレは泉。よろしくな」 「ね、中学ン時はどこ守ってた?」 何となく訊いてみたら少し打解けてきてくれたのかさっきよりも自然な笑みを向けて答えてくれた。 「外野」 「マジで?オレも外野やってたよっ。オレ内外やってたんだ〜」 なんだか、初対面のコイツと話してるのが楽しくなってきたみたい。なんだろ。まだ会ってちょっとしか経ってないんだけど、オレ、コイツと仲良くなれそうな気がする。つーか、仲良くなりたいなぁ。あ、同じ野球部に入る訳だし、仲良くなれるか。うれしいな、なんて思っていたら。 一度、瞬きをして、 その大きな目を細め。 閉じたと、思ったら。 「お、なら一緒に外野入るかもなっ。がんばろーぜ!」 にっこり。 太陽みたいに眩しく、向日葵みたいに明るく笑った。 その顔を不覚にも"かわいい"なんて思ってしまった、オレ。『水谷文貴』、15歳。高校っていったら青春がいっぱいで、野球部っていう名目だけで女子に結構好かれたりしちゃえるんだろうなってどうしようもない期待に胸膨らませてた。うん、だって、そりゃあ女の子好きだもん。かわいいじゃん。 だけど。 「どした?水谷。顔赤いぞ」 「ぅえ?!う…ううん!何でもない!がっ、がんばろうな!えっと…泉!」 「…?おう」 不覚です。ほんとに不甲斐ないくらい不覚です。 高校球児になろうとしてる目の前の歴とした男の笑顔に、完璧にヤラれてしまいました。 一度逸らした視線を訝しみながら向けてこられて、胸の内を悟られないよう必死に笑ってみたけど…どうだろ。笑えたかな。 今思えば、この時、この場所で…総てがはじまったんだ。 これからどうなっちゃうんだろう…オレの青春。 END +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ 馴れ初め水谷サイド。 絶対水谷の一方的な一目惚れだったらいいと思う((笑。 07,09,07 [NEXT] |