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・・・・・・あ。

多分、声は辛うじて出てなかったと思う。
でも、はっきり言ってこれは驚かざるを得ない。

・・・だって・・・

・・・アイツだろ?





自分が受け持つ事になった子供たちと初めて任務を貰いに受付所に向かう途中で、今まで自分の周りでギャーギャー騒いでいた子供たちが、かなり離れて前を歩いている男にいきなり走って行った。

「・・・なんだぁ?」

それでも、何か考えがあるのかと止めずにその様子を見る。
すると、先に駆け出していたナルトがその男の背中に突撃する勢いで抱きついた。少しよろけたものの、その男は突然のナルトの行動にも怒る事なく、少し小言を言っただけで、後はナルトやその後に近づいた二人にも何やら楽しそうに話をしていた。

・・・もしかして、彼が?
少し前に三代目や同僚らが言っていたナルトがなついていて他の子供たちからも信頼されているという“イルカ”という人物なのかと前の様子を見ながら考える。
まぁ、確かに大概は狐付きと知っている者は、まず毛嫌いしてナルトにあんな事はさせないし、ナルトもしないだろう。なるほど、確かに珍しいかもと、別に自分も走る必要はないとゆっくりとその集団に近づく。

そして、子供たちを見ていた男は近づいて来た俺の気配を感じたのだろう顔を上げた。






声は出なかった。

でも、あまりな驚きに動きが止まってしまった。

・・・いや、まさか。
・・・でも・・・あれ?・・・という事は・・・?

・・・彼が、イルカ?





「初めまして!私はこの子達をアカデミーで教えていました、中忍海野イルカです。はたけ上忍にお会いできるなんて光栄です!・・・この子達の事・・・宜しくお願い致します!」



・・・・・・・・・えっ?


きっかり90度に曲げたその男の姿を見ながら、思考が停止した。


・・・いや、あんた、会ったじゃない・・・

あの夜に・・・俺の腕を掴んで・・・俺の名前言ってたよね?


呆然としている俺を他所に子供たちは前の男の腕を掴んで何やらどのようにして合格したかを世話しなく話している。

確かにあの夜の男は彼だった。
きっちりまとめ上げた真っ黒な髪と半分しか見えていないが、頑固そうな眉、それに鼻の上の傷は忘れていない。
何も話さなかったら、思いださなかっただろうが、長期任務から帰って来ていきなりな出来事なのも重なり、そうそう忘れるものじゃなかった。
彼の強気な態度だと思ったら驚いてしまう程の慌て振り。確かに、彼は昼間の忍だろうとは思ったが。


それなのに、彼は忘れている?

それとも、わざと昼は昼、夜は夜と別けているとか?

あの夜もこの男の事はよくわからないと思ったが、やはりなんとなく考えている事が掴めそうで掴めないとあの時感じた警戒すべき考えが出てきている。

前の男はまだ俺に話があったらしく途中で遮られたナルトをやんわりと断りながら、再び此方を向いた。

「・・・まぁぼちぼち頑張りますよ」

視線が合った時を見計らい言葉を吐くと、見た事のあるキョトンと一瞬呆けた顔になった。


・・・ほら、その顔だって見た事あるし・・・それなのに、無かった事にしちゃうんだ、アンタは・・・


「・・・は、はい。宜しくお願いします」

俺の不機嫌な雰囲気を微妙に感じ取ったのかよくわからないけど、先程のハキハキとした態度からは少し大人しくなる。
唯一表に出ている右目を細めて見せたけど、嘘だと気がついているかも。


「なあなあ、イルカ先生ー!今日ラーメン食べに行こうってばよ?」

俺達の微妙な空気なんてまるで感じないのだろう、ナルトが横から男の腕にしがみつき駄々をこね始めた。

「はぁ?まだ任務も終わってないだろうが・・・てか、悪いなぁ、今日はアカデミーの当直で・・・」

「ええっ?・・・じゃあしょうがねぇってばよ・・・」

「アンタねぇ・・・いい加減イルカ先生に集るの止めなさいよ!」

「ウスラトンカチが・・・」

「ああっ!?何だとサスケ!!」

「なんだよ!?」


またもや、飽きずに喧嘩し始めた二人を前の男とサクラが落ち着かせ様と中に入り話している姿を見て、自分は意外にも客観的に眺めてしまった。
・・・いや、と言うか、入る事に躊躇してしまったのか?

まだ、自分でも子供達との間にも薄い膜がある事に前にいる男を見て思い知らされたのだった。







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