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恋してイルカ?[01]





何だよあの最悪上忍は!


こんな事なら言わなきゃ良かった。
長年ずっと想い続けていて、前と変わらない彼との付き合いにもしかしたらなんて馬鹿げた期待なんかしちまった。
そんな考えをした自分も馬鹿だけどさ。

本当、麻痺していたんだな。



もしかしたら、万が一でも望みがあるのなら、彼の恋人になれるんじゃないかってね。









「……はぁ〜、行きたくねー」

今までアカデミーの教師になってかなりな年数が経っていたが、朝こんなセリフを吐いた事なんか無かった。
受付任務を受けたってここまで気持ちが後ろ向きになった事も。


何時もの軽めな朝食を食べても腹の中に入っていく感覚さえわからない。
無理矢理トーストを牛乳で流し込み、仕方なしに立ち上がる。
前の日に用意した教材を時間稼ぎの様に確認して肩にさげ長いため息と同時に玄関を出た。






こんなに憂鬱な気分になっているのは、半分は自分のせいもある。
やっぱりあんな事するんじゃ無かったなんて今更後悔しても後の祭りで、日々はこんな自分を関係無しに過ぎていく訳だし。




……本当どうかしてたんだよ。

彼との会話があんなにも楽しかったから。
彼の眼差しがとても優しかったから。
自分はもしかしたら特別なんじゃないだろうか…なんて。


だけど、結局はその他と変わらないと思われていたんだ。


つい3日前の出来事だが、思い出しただけでまた悔しくて、そんな自分が情けない気持ちになり必死に押さえつけ様と歯を食いしばった。








+ + +







『……………は?』


そう言ったカカシ先生の惚けた顔は今でもはっきり覚えている。
随分間を開け、徐々に眉間に皺が寄っていった。


『……あの〜、ちょっと、言っている意味がわからないんですが……』




彼に告白する為に、一ヶ月前から練習をした俺の一世一代の告白を"わからない"で蹴り飛ばした唯一右目だけを外に晒している人は、黙っている自分に参ったなぁーとのんびりとだが、ハッキリと拒絶の言葉を吐いた。
俺は、自分が上手く言えたかどうかもわからない程頭の中は心臓の音が五月蝿くて自覚する位顔が熱いと感じていたのに、それでもカカシ先生の言葉だけは鮮明
に聞こえた。


『……あのね、俺はイルカ先生と酒を呑んで話しをするだけで凄い楽しかったんです……ただ、それだけなんです…その他の感情は、ハッキリ言って無い…んですけどねぇ……』


また参ったなぁーと癖なのか、頭の後ろをガリガリと掻き、下を向いている。
男の癖にとか、中忍の癖にとか辛辣な言葉は無かったもののキッパリ、自分の気持ちに答えられないと言われてしまった。

ドッと体が一気に重くなった。
座り込みたいのを彼の目の前ではと必死に足に力を入れ耐える。
"…あ、ヤバイ…"
鼻の奥がツンとして涙が出るかもと、意識を違う方に向けた。

急いで去ろう。
そして誰もいない所でひっそり泣いて、諦めよう。


「……あ、そうですよね。……いや、すみませんでした!あの、忘れて下さい……では、失礼します!」

急いで頭を下げるとそのまま頭を上げずに振り向いたが、動き出そうとした瞬間強く腕を捕まれた。
驚愕で振り向きカカシ先生の顔が近くにあって、自分の方が仰け反ってしまった。


「……あ、でもさ、割り切った関係なら大丈夫ですよ?」





…………は?
割り切った関係?



何だ?ソレって?




「………割り切った関係て?」




質問した自分にニコリと柔らかい笑みを浮かべた。




「ん、恋人ってまではいかないけど、そうだなぁー、体だけの関係?……ま、セックスフレンドなら」






ズガンと頭に衝撃を受けたみたいだった。






……彼は何を言っている?


体だけ?


セックスフレンド?






……………………






「……はあっ!?」


「いや、セフレならいいですよ?」


エヘッと笑う顔は今の発言を悪いと微塵も思って無いのか、まるで普段の会話の様に話す。



「………あれ?イルカ先生どうかしましたか?」



「……………」


「………イルカ……」

「……ーーーッ、ふざけんなっ!!!」



彼が上忍さえも忘れて怒鳴った。
掴まれていた腕を思いきり振り払い、ギッと睨みつけた。
今の怒りで我慢していた涙も溢れそうになって、でも意地でも出すまいと歯を食いしばったけど潤んでいるのはわかっているから、少しは出たかもしれない。

そんな自分を見ても何故怒っているのかわからないという様な不思議そうな眼差しが余計腹ただしい。

怒りに任せて彼を殴りたかったのに、こんな彼に言った所で余計自分が惨めになりそうに感じ、グッと目を瞑り怒りを収めようと呼吸を整えた。




「……すみませんが、それは出来ません」


「………え?」

「………いや、いいんです。すみませんが、私の言った事は忘れて下さい。お時間を取らさせてしまい申し訳ありませんでした!」

後半は早く去りたいのもあり、早口になってしまったが仕方がない。



こんな所に一秒もいたくない。

深々と頭を下げ、急いで振り返ると一気に走り出した。






…何だよ!!
あの男はっ!!

何が里が誇る忍者だっ!!
あんな事を平気で言える奴を里が誇っていたって俺は絶対認めないぞっ!!
きっと戦いでおかしくなってしまったのだ!
あれだ。
紙一重というやつだ。


そんな人を今まで自分は尊敬していたなんて!
愚かすぎる。





…そんな人を好きだったなんて………



そこまで考えがいくとさっきまでの勢いは薄れていった。
気がついたら足は止まっていて。




「………好きだったのにな……」




カカシ先生のおかしな発言で忘れてしまったが、彼は言ったのだ。

俺とはつき合えないと。

そこまでの考えは無いと。

キッパリ拒絶されたのだ。





「………ああ、俺も馬鹿だよなぁ」





何気に上を見上げると、さっきまで晴れていた空が薄い雲に覆われて今にも雨が降りそうだった。
このまま雨でも降ればいい。
一気にやさぐれてしまった心をこの雨で流して欲しいと思った。









※突然始まった、振られからのお話し。てか、イルカ先生振られてる…さて、どうするか?あれです、カカシは可笑しいのでは無く、まぁ少しずつわかっていくかと。



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