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ひとかけら。
[04]







「カカシ先生!すみません!遅くなってしまいまして!」

約束の時間より早めに来てしまった俺は、アカデミーの門の前に立ち暇な時をいつもの愛読書で過ごしていた。

残業が入ってしまったと走って来て、申し訳なさそうに謝るイルカ先生に嬉しさの方が勝って不機嫌になれる筈もなく、急ぎましょうとイルカ先生を促し店に向かった。


向かった店はたまに仲間と飲みに行く居酒屋で、造りは古いが酒は豊富にあり季節事の料理がとても上手い所だった。
イルカ先生も時々来ていると言いこんな所にも共通点があったのかと細やかな幸せを感じる。


「今は魚料理が美味しいですよね。俺肉より魚が好きなんでこういう時期はしょっちゅう来ているんです」

「あ、俺もです!…やっぱり男だけだとこういう料理は作れませんしね」

おしぼりを持って来た定員にビールと軽いつまみを頼み、イルカ先生が手を拭いてメニューを見る。自分も口布を下げ顔を寄せそれを見た。

「…あ、ねえ?この煮物も美味しそう」

「本当ですね!ハハッやっぱり食べたくなりますよねぇ?普段食べれない分余計に」

男特有の寂しい会話も何だか二人だと楽しくて、あれやこれと頼んで舌鼓みを打ちながらまるで、女子の様にはしゃいでいた。

ある程度腹も膨れ気分も良くなり、そうするとイルカ先生は普段より砕けた態度になって肘をテーブルに付き顔をその上に乗せジッとこちらを見ている。

その少し焦点が合わない潤んだ瞳を向けられると、無理やり押え付けている邪な感情が漏れそうで余計頭の中が熱くなってくる。


「…そういえば……カカシ先生は、好きな人とかいるんですか?」



「……………は?………あ、…………え、と」


今の今までそんな会話の雰囲気にならなかったのに、突然振られた質問に返事が出来なかった。


いや、したくないというのもあったかも。



「……うーん…どうでしょうねぇ……」

「だってカカシ先生みたいに格好良かったら、モテるでしょう?……でも、普段見てても女性と歩いていたっていうのはあまり聞かないし……もしかしたら、恋人は里外に出ているのかなぁ…なんて…」

「…ははっ、そうすると俺の恋人は同じ忍びになりますねぇ」

「…一般の方が良いですか?」

「う〜ん…どうでしょうねぇ?まあ、どっちにしろ俺の恋人になる人は……可哀想ですからね」

「どうしてですか?」

「…だって常に『死』と隣り合わせでしょ?…辛いでしょ?そんな人を待っているのって?一般なら尚更です」

「……そりゃ…」

「…自分の人生に巻き添えは相手が可哀想ですよ」

かつて自分の母も忍びでは無かったと聞いた事がある。
任務で次々と功績を上げる父を周りは誉め讃えたが、唯一それを苦々しく思っていたのは母だけだった。
里内から出た事が無く普通に育って来た母には、忍びの妻でいる事に、毎日血の匂いを漂わせ帰って来る父に神経が耐えられ無かったのだろう。
自分が物心付く頃には、もう母の姿は無かった。はたけの姓からも離れ忍びとの関わりを断絶したと聞いた。
母の顔さえ記憶に無く、母親もいた証しさえ残してくれなかった事に、寂しいと思うよりも何故か仕方が無いと考えた自分はやはり忍びの子なのだと自覚した。
温もりよりも忍びとしての人生を選んでしまった子供に幸せな家庭なんて作れる訳がない。

……でも、あなたとなら……
暖かさなんていらないと過ごして来て、それが当たり前だと生きてきた俺に一筋の光をくれた人となら。


……でもそれは、言えない。











※相変わらず、カカシ一人アンニュイに陥ってます。
カカシ母親は捏造です。本誌で本当の事書かれてたりして…(・_・;





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