イトシイイトシイトイウココロ。
[02]
「……俺だって頑張ってるんです…」
小さく呟きが聞こえた。
そう言いながらズリズリと這ってきた彼は、胡座をかいている自分に近付き両腕でガシッと腰に巻き付いた。
「…っ!…ちょっ、ちょっと、カカシせんせっ…」
ヤバイ!顔が赤くなってくる!
恥ずかしさと腰の圧迫感に慌てて引き剥がそうとするが、さすが上忍、易々とは剥がせない。
「…もうっ、カカシ先生っ……」
「……俺だって、いつかはと思って…頑張ってるのに…何で上手くいかないんだろう…」
「…そんな事言われても…」
俺だってそうだ。
「…気持ちをハッキリ伝えれば良かったのかなぁ……でも、怖いんです…」
カカシ先生の独白に近い言葉がまるで自分の事の様でしがみついたカカシ先生の腕を掴んだまま動けなかった。
「……何か、もう疲れました……」
「……………」
俺も本当の気持ちはそうかも。
こんな辛い想いからもう逃げたい。
離れたい。
でも、出来ない。
……だから、早く、あなたが…
「……早く気づいてよ……」
心臓が一瞬止まったかと思った。
「……ねぇ、お願い……」
こんなに密着しているのだから、カカシ先生の声はハッキリ聞こえた。
何故?
彼は誰に対して言っている?
「……………ッ」
音にならない掠れた声が出た。
さらに腰に回された腕に力が入った。
微かにカカシ先生が震えているのが、伝わってくる。
頭の中でまさか、いや、自惚れるなと叫んでいるのに鼓動はどんどん早く顔の熱が急激に上がっていくのがわかった。
密着しているカカシ先生に、もしかしたら体温でバレてしまうかもしれない。
離れなくては!
…でも…
僅かな望みをかけ聞きたい衝動が、足枷をはめられたみたいにその場から体が動かない。
「……俺は…運命の人は見つかっているんです…」
ビクリと巻き付いていた手が振るえた。
「…………え?」
ゆっくりと顔を上げるカカシ先生を瞳の端に捉え、真っすぐ前を向いたまま言葉を吐いた。
自分の顔が赤いのはもうわかっている。
震えそうになる手を机に乗せ強く握った。
「……でも、言えません……せっかく上手くいっている関係を失うのが嫌…だったんです」
「………イ、イルカ先生……」
「…本当は俺は、ズルいし、女々しい奴なんです」
カカシ先生を見下ろし、目が合う。そっと彼の腕に手を乗せ自嘲めいた笑みを浮かべる。
「………俺は…どうしたら良いんでしょうか?…カカ、ッ、……ッ?」
言い終わる前に体がグイッと後ろに引っ張られ、いきなりなカカシ先生の行動に後頭部を打つ恐怖に目を瞑る。
しかし、仰向けに倒れても頭に痛みは訪れずソッと目を開けると自分におい被さり目の前には真剣な顔のカカシ先生がいた。
「……何?…それって…」
「……何が…ですか?」
「…今の、どう捉えればいい?」
「………お好きなように…」
「………いいの?俺の好きな様に考えても?…自分の都合良く変えるかもしれないよ?」
すると、カカシ先生の顔がユックリ近付いて来て…
自分の唇に冷たく、でも軟らかい何かが押し付けられた。
それがカカシ先生の唇だとわかるのに少し時間がかかった。
徐々にわかってきた時には息苦しさもあって口が僅かに開く。
その隙を逃すまいとカカシ先生の舌がするりと口内へと急速に割り入って来た。
「……ン、フッ……」
顔の向きを幾度となく変え激しい口づけをされ自分も段々息が荒くなってくる。
頭の中が霞がかかっか様にボヤケてきた。
「…はっ…ア…」
漸く離された時には口の回りはどちらともわからぬ涎で濡れ何度となく吸われた唇は熱く腫れていた。
息を整えながらぼやける瞳で前の顔を見る。
「…こういう意味なんだけど……」
彼も少なからず興奮しているのか、目を潤ませ頬を赤くしたカカシ先生の顔は壮絶に色っぽかった。
荒い息を吐く合間に囁かれた言葉に嬉しさと悔しさが入り混じり涙が出た。
…カカシ先生も自分を想っていてくれた。
でも、だったら、どうして他の女の所に行っていたのか?
香水の香りや女の気配を漂わせて来る彼にどんなに胸を痛めたか。
「……だったら、どうして女性と付き合ってたりしたんですか?」
俺の質問にアッと狼狽えるカカシ先生の顔を見て今まで我慢してきた気持ちが爆発した。
自分の上においかぶさるカカシ先生を力の限り押し退けた。
「あっ!?…ちょ、ちょっと!イルカ先生誤解しないでっ!違うから!」
「何が違うんだっ!?…お、俺も、その中の一人に加えるつもりですかっ!?」
「は?何言ってるの?…誤解の無い様に説明するから」
「…何がですか?説明って…」
「…あ〜…何て言うか、付き合っていた女達とは…まぁ、誰ともしていないというか…」
「……?……何を?」
モゴモゴと話すカカシ先生に少し苛つきながらま聞き返す。
カカシ先生の口から女の言葉が出てきてさっきあった悔しさがまたぶり返してきた。
「…だから……なんですか?」
「…だから……誰とも、寝てないですから」
「………………は?……寝て?…ッ、あっ!?……えっ?…寝てないっ!?」
寝るという事は、つまり、そういう事で……
じゃあ、何であんなに入れ替わり女性が変ってたのか?
カカシ先生の顔を見ると、バツが悪そうな微妙な表情で首の後ろを掻いている。
しどろもどろな説明をまとめると、女と別れた事を理由に、俺の家に来れるだろうと。
つまり、カカシ先生も想いが俺に言えなかった。だけど、ここにも来たい、だから女を使いこの家に来る理由を作っていた。
「…結局はそんな理由を作りたいから、女と付き合っていた訳だし、飲みにいったりはしましたが…寝る気にもならなかったです」
「……ああ…本当にバカだなぁ…」
「……すみません」
「…違いますよ、自分に言ったんです」
「…イルカ先生?」
もっと早くカカシ先生に言えば良かった。
ともすれば、早く詰れば良かったんだ。
自分の元に戻ってくるから?
まだ始まってもいないのに?
「…もっと早くカカシ先生を詰れば良かった……」
思わず笑ったが、乾いた笑い声しか出なかった。
そっと頬を挟まれ視線を上げる。
そこには今にも泣きそうな顔があった。
「…泣かないで…イルカ先生」
どっちが泣きそうなんだか。
「…泣いてません」
「ごめんなさい、俺もあんな遠回りしないで、イルカ先生に伝えられば良かった」
本当はどっちも不器用で、それ故にここまで来るのに時間がかかった。
でも不器用だからこそ自分達はこれが良かったのかもしれない。
「……いいんです、この方が良かったかも…」
漸く心の奥から笑えそうで、自分の頬を包むカカシ先生の手に触れた。
「…俺、多分、カカシ先生に一目惚れしたんだと思います」
「アッ、それを先に言いますか?俺だって一目惚れですからね!ナルト達から紹介された時からなんですから」
「……プッ、じゃあ、一緒じゃないですか……俺はずっと、ずっと……」
「まった!ちょっとまって!」
慌てて手で口を塞がれる。
「そこから先は待って!てか、俺から言わせて、ね?」
何だか予想はつきクスクスと笑いが出てしまう。
もうと言いながらもいつの間にかまた重なっていた体の上からゆっくりカカシ先生の顔が近づいて唇が重なる瞬間小さく囁かれた。
「イルカ先生が好き…」
ウットリと目を閉じながら、"俺もずっと好きです"と返した。
END
※やっと書けましたぁ!…てか、本誌でカカシ先生死す。とか、書いてて気分は
かなりブルー(>_<)。お願いします!せめて命だけは取らないでー!
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