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イトシイイトシイトイウココロ。
[01]







「イルカ先生〜居るー?」


居るも何もわかってて言っているんだろうに。

半分呆れも入りながらも、今日もまた玄関の扉を開けた。
少し開けた扉の隙間からスッと白くて細い手が入ってきてゆっくりと開いた。
扉の前に立っているのは、もうかなりな付き合いになる男。
それでも、偶然なきっかけが無ければ知り合いになどならなかった男。
この木の葉の里を代表する程のエリート忍者。
はたけカカシ。

名前は小さい時から聞いていて、ある意味伝説の様に感じていた人物だったのに。
アカデミーで教えていた子供達繋がりで知り合い、その子供達が自分達の元から離れてしまっても何故かその付き合いは続いている。
そうすると、今まで名前しか知らなかった彼の素性が見えてきて自分の様な庶民的な様子に安心と共感が湧いた。

ただ、一つの事を除いては。

「あ〜あ…まぁた、別れちゃいましたよぉ…」
「…カカシ先生…今月に入って、何人目ですか?」
「…ん?…ウーン、5人目?」

ああっ!今上忍に勝る力があったのなら、この顔を思い切りはり倒してやりたいっ!!

怒りでプルプルと震える拳を反対の手で必死に抑えた。
「……どうしたの?」
「…ーーっ、いいえっ!何でもありません!」

これ以上向かい合っていると、怒鳴りたくなってしまうと振り返りドカドカと居間に戻った。

そう、彼は女癖が悪いのだ。

確かに初めて彼の顔を見た時は、驚いてしまった。
それ位男前だったんだ。
前々からカカシ先生がもてるというのは知っていたし、同じアカデミー内の女職員だってカカシ先生に憧れているのは多いと聞いた。

それに、悔しい事に、
自分でもビックリしたが、
俺も惹かれてしまったんだ。

同じ男である、はたけカカシに。

ナルト達の事でお話しがと言う内容で誘われた酒宴は気がつけば同じ男同士下世話な話しに移っていたりと他の同僚達と会話と全く変わらなかった。
彼の知名度と素晴らしい功績を先に耳にしていたものだから、緊張をしていた自分はその違いに、同じ庶民的な感覚に嬉しくてまた違う意味で興奮していた様な気がする。

そして、彼ともっと話しがしたいと思う様になり、それが恋になるまで時間はかからなかった。
もちろん驚愕したし、まさかそんな事はと何度も否定した。
だけど出来なかった。
女とつき合った事だってある。
はっきり言って触るなら断然女の体の方が良いし、気持ちが良い。
そもそも男を抱いた事も無いし、抱かれた事も無い。
いや、まず気持ちが悪い。

悪い筈なのに……

女に振られたと微かな香水を纏わせ俺の家に帰って来るカカシ先生にどす黒い感情が湧かない筈がない。
だけど、どんな事があってもここに帰って来てくれる彼を愛おしくて仕方が無い気持ちもある。

ようは自分は身勝手な独占欲があるのだ。

もし自分が気持ちを伝えて否定されたら彼はもうここに帰って来ないだろう。
怖くて告白出来ないくせに、女の気配があると意地が悪い女にの様に荒んだ気持ちが湧いて来る。

何て自分は女々しくて、愚かなんだろう。


だから、せめて彼女でも作りこんな苦しい恋から離れたいと頑張っているのに。
其の彼女でさえ、あともう少しで上手くいく寸前でこの男に取られてしまう。

何だよ?
俺はあんたを諦めて違う恋に進むことでさえも許せられないのかっ?
何時までもこんな惨めで不毛な気持ちでいろとでも言うつもりか?

何となくは知っていた。
上手くいきそうな女性だって俺じゃなく後ろの彼を見ている事にも。
でも、いつかはと頑張っているのに。

「………ホント、俺ってバカ」
「…ん?何か言った?」

サンダルを脱いでペタペタ歩いて来たカカシ先生が聞き返す。

「……ええ、なーんでこんな人を毎回家に上げているんだろうなぁと、自分がアホらしくなりまして」
「ぅわっ!イルカ先生つめたーい…」

ヨヨヨとわざとらしい態度で畳みの上に寝転んだ。
僅かな意地でフンと切り捨てて卓袱台の上にある答案用紙の採点の続きを始める。

意識を前の用紙に移そうと思った。
そうしなければ、何だか惨め過ぎて泣けて来そうだった。

もし自分が女だったらとかは考えないが、僅かでも彼に好かれる姿にはなりたかった。こんなゴツい体では無く筋肉が均等についた彼に見合う体格とか、横に並んでも違和感無い顔とか。

…やっぱり、いいや。
ごめんなさい。父ちゃん、母ちゃん。
せっかくくれた体を卑下にしてゴメン。

「…やっぱり、中の女も駄目なのかなぁ…」

ポツリ呟くカカシ先生の声で現実に引き戻された。
俺が一人悶々と考えている間、カカシ先生も自分なりに何かしら悩んでいた様だった。

「…あ〜〜…、外勤の女より癒して貰えると思ったんだけどなぁ…」
「…癒して貰える…て、今日別れた人ってつい三日前に付き合ったばかりですよね?そんなの、まだわからないじゃないですか?」

意見した自分に背中を向けて寝転んでいたカカシ先生が腕を頭に組んだまま、ゴロリと体を反転させた。
重力で銀色の髪がダラリと顔半分を隠す。そんな姿も何だか色っぽくて焦る自分を必死に抑えた。

「……でもねぇ、運命の人だったら三日もかからないよ。見た瞬間にわかるんだから」


……そんなのわかってる。
俺がカカシ先生見た時、そう思ったんだ。
だけど、彼は俺に対して思わなかったという事だけで。

「…でも、相手も同時に気付くって訳ではないでしょうに…」
「……そりゃ、そうですがね…」
「…きっと、この人が運命の人だと思うのならばもう少し頑張ってみる事です」

カカシ先生に説教まがいな事を言える立場では無いのに、俺は何を言っているんだか。
自分への慰めのことばみたいだ。

諦めるな。
まだチャンスはある。
いつか振り向いてくれる。

ああ、本当に自分が哀れ。

思わず苦笑が漏れていた。













※イルカ先生乙女?(汗)








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あきゅろす。
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