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ひとかけら。
[02]






任務が終わり受付所に行く途中でだった。
彼の同期で同じアカデミーの教師をしている男が他の教師との会話の中にイルカ先生の名前が出てきて、何気に足を止め聞いてしまった。

だが、それが悪かったのだ。

先月末にアカデミー教師達の懇親会があり、その二次会での出来事だったらしい。
教師といえどしょせんは男共の集まりで、そうすると話す内容は下世話な話しもあり、その中でいつまでたっても女の気配が無いイルカ先生におせっかい心で話しを振った。
いつもは、明日のアカデミーに響くからとすぐ帰るイルカ先生が二次会に出ていて、もしかしたら仲間達はその珍しさもあったのかもしれない。

「なぁ?イルカお前いつまで独り身でいるつもりだぁ?」

女の話しになると、すぐ逃げてしまうイルカだから今度も駄目かと思ったが、何故か素直に反応してきた。

「……別に…いい。まだ彼女なんていらない…」

「お前なぁ〜何寂しい事言ってんだよ〜……てか、アカデミーだとあまり出会いがないかぁ」

「そんな事ないぞ……それなりに……まあ……」

「誰だよ?」

「…………」

「…………なあ?」

「………………」

確かに、アカデミーにいる女性も限られていて、その中でも未婚相手は少数しかいない。
その狭い範囲内で探すのも有りだが、外で出逢いを求めるのもおかしくない筈なのに、行動を起こさないイルカ先生は、さらに色事よりも教育だという態度が周りの女性達からも余計その対象から外しているらしい。
それ故に、逆に周りの連中が心配しているというのに、本人は気が付かないのかはたまたワザとなのか。

「…とにかく、まだいいって……」
「でもなぁ、いつまでも……」

「…ーッ!もうっ!いいんだってば!俺にはずっと好きな人がいるんだ!恋人にするんだったらその人がいいっ!」

鼻息荒くもう放っておいてくれとばかりに叫んだ言葉だったが、はいそうですかと受け流すにはとても出来ない言葉で、何気に聞き耳を立てていた他の同僚も驚いて近付いて来た。

「ええっ!?イルカ、お前好きな人いたのかっ!?」

「本当か?誰だよ!?アカデミー?一般?」

「何?まさか教え子の母親とか言うなよ!?」

意外にワラワラと集まって来た人数にさすがにイルカ先生は驚いたらしく漸く我に返って、その後はモゴモゴと要領を得ない言葉で誤摩化された。
そんなイルカ先生から誘導質問で僅かに聞き出せた事は、イルカ先生は結構長く片思いをしているという事と相手は自分を恋愛対象として見ていないという事。
それでも自分はその相手が幸せなら一生想いは告げなくても良いという事。
初めから諦めた様な態度にせめて告白だけでもしてみろと言う同僚に断られて避けられるよりは今のままが良いと苦笑で断られた。
一人でいるイルカ先生も可哀想だが、そんな実らないとわかっている気持ちで過していくのはもっと可哀想で同僚達もどうにかしてやりたかったが、頑として相手を教えてくれない。

頑ななイルカ先生の事だ。
そう思ったら絶対そうする。
まず自分の幸せを次に置いてしまう、それでも笑っているのがイルカ先生なのだ。

ちょっかいをかけるつもりがあまりのイルカ先生の健気さに結局同僚達はその恋を影から応援してやろうと決めたのだった。





「ガンと決めたら梃子でも動かないイルカの事だからなぁ、ありゃあ、苦労するぞぉ」

笑い話にしながらも、何となく心配している感がある同僚の会話だった。






………てっ、笑い話しになるかっ!!
何ソレッ!?そんなのイルカ先生から聞いた事ないっ!!


片手から落ちた小説を拾う事さえ忘れる程、驚愕で怒りの気配が漏れそうになるのを必死に抑えた。



少しは信頼されていると思ってた。

子供達を介して知り合い、いつの間にか、昔からの知り合いの様に打ち解けて何でも話し合える様な良い関係になっていると思っていたのに。

……もしかしたら、それは自分が恋している気持ちが混ざった驕りだったのかもしれない。
ドンッと暗闇の底にいきなり叩き落とされた感覚に陥った。


そんな事を聞かされ、今更この気持ちを伝えた所でとんだピエロだ。

それでも、この気持ちを消したくなくてしぶとくイルカ先生に近付いて、ただ傍にいれるだけでと惨めな態度をとっている自分はピエロよりも更に滑稽ではないだろうかと落ち込んだ。



















※中途半端な切り方ですね。(汗)
しかし、まだハッキリ言ってカカシさんイルカ先生と会話中なんですけど。…自分の葛藤と回想が長いね。


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あきゅろす。
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