はじまりの…[01]
「……………あっ」
その声はどちらから発せられたのか。
任務が終わり、夕飯を食べようと目当ての店に向かおうとしてる所で、見知った顔と出会した。
彼も今仕事からの帰りだったのか、肩から鞄を下げ手には書類や巻物が入った袋を持っていた。
俺が初めて教えた下忍達の元教師。
うみのイルカ。
子供達がまだいた頃、彼ら繋がりで知り合いになって時々飲みに行く事もあったが木の葉崩し少し前から気まずくなり、その後は忙しさもあいまって挨拶程度にしか話をしていなかった。
サスケが里を抜け、サクラは五代目火影の弟子になり、彼の一番のお気に入りのナルトが自来也さんと修行の旅に出てしまってからは、ますますきっかけも無くなっていった。
………でも、以前彼と飲んだ時は昔からの知り合の様に楽しくて、変な話だが彼の隣がとても居心地が良いと感じた事を思い出した。
「お久しぶりです!………任務お疲れさまでした!ご無事で何よりです」
「あ、はぁ、ありがとうございます……」
アカデミーや受付事務もこなしている他に五代目に代わってもその性格の実直さと信頼性でシズネ程ではないが時々火影の身の回りの手伝いをしているらしい。
何だかそれは、自分が見られている訳では無いのに隠し事が出来なそうに感じて複雑な気分になる。
…でも、嫌って訳でもないんだよねぇ。
それも不思議。
一人黙りこんでしまった俺の様子がどの様に彼に映ったのか、ぎこちない笑顔になり俯き恐縮しだした。
「……あ、お疲れでしたよね?申し訳ありません…では、失礼します…」
「…え?…ちょ、ちょっと待って?」
突然お辞儀をして、去ろうとするイルカ先生を慌てて腕を掴み止めた。
「……え?何?あ、別に疲れてないから」
焦りながら逃げようとした彼を何故か俺は止めてしまった。
何でだ?と疑問が浮かぶと同時に向こうに背けた彼の顔を見て、やっぱり呼びとめなければ良かったのかと後悔した。
いつもキリリと上がった眉を下げとても困った顔をしている。
「……あ、ねぇ?イルカ先生ご飯まだ?もし良かったら今からどこか食べに行きません?」
「………えっ?……でも…」
ふと彼が持っている書類に気がついた。
「…あー、もしかしてまだ仕事とかありましたか?」
「い、いえっ。これはただ整理しようと持って来てしまっただけですから」
「そう?だったら…行きません?」
「は……はいっ!」
何となくこのまま別れるのが惜しくて。
普段他人に対して積極的ではない俺がこんな事をしているなんて。
自分で誘っておきながら内心驚愕した。
しかし、顔には出さず隣で一緒に歩きだしたイルカ先生の顔を見ると俺の視線に気付いたのかこちらを見てニコリと笑った。
縦社会を笠にしてと思われていたらどうしようと少しヒヤヒヤしたが、彼の暖かくなる様な笑顔に心臓がぎゅっと締め付けられ慌てた。
……ほーんと、俺どうしちゃったんだろうねぇ〜……
この男といると、体の奥がむず痒くとても焦れったい気分になる。
それをどうして良いかわからず余計混乱してしまう。
それでも、少しでもこの先生といたいと思う。
本当に何だろうと、彼が教えてくれた居酒屋に着くまで頭の中はその考えでいっぱいだった。
※うーん。何でしょうか……カカシの気持ちが気付き初めとでもいいますか……1話にするつもりが、長くなったので切りました。次で終われたら良いんだけど……
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