6 下忍を教える事になり上忍待機所に通う様になると、しょっちゅうあの男の声を聞く様になった。 確かにアカデミーの授業でこの建物の近くにある練習所を使うが、その声が注意しているのか、かなりな大きな声で待機所の窓を開けているともうハッキリ聞こえてくる。 ・・・うるさい。 今まで、待機所に誰もいなかった為にソファーに寝転び昼寝でもと考えていたのに。 「・・・よくあんな元気があるな・・・」 「そりゃ、それがアイツの取り柄みたいなもんだからな」 入り口から聞こえた声に閉じていた目をゆっくり開けた。 気配は感じていた。 それでも、そのままの体勢でいるのは、こんな格好で寝ている俺の横に図々しく座れる位の付き合いだからだ。 ドカッと隣に座り、煙草を取り出した。 「ちょっと、煙いから近くで吸うな」 「だったらオメェが違う所で寝ろ。邪魔なんだよ」 「ウッセ、熊」 フンと寝返りをして背凭れに顔を付ける格好になる。 今日は受け持つ下忍達の仕事が朝早くからの依頼で、商人の屋敷の庭の草むしりだった。 やはりと言うか、ブーブー文句を吐きながらそれでも、せっせと仕事をやり遂げ予定時間よりも早く終わってしまい、丁度昼時に重なる事もあり子供達に迫られるまま昼を奢らされ満足な顔をして三人は各々家路に帰った。 俺はというと、それで帰れる訳もなくまたここに戻り個人の依頼を待つ。 「・・・ん〜、やっぱり声が邪魔」 「そうかよ」 やれやれとため息混じりに紫煙を吐かれた。 ・・・あの男は苦手だ。 どうにも近づけない。 怖いとかそういうんではないのだが・・・ ・・・でも、一つだけ気になっている事がある。 あの夜の事。 彼の様子は一体何だったのか? そして、何故次の日は何も無かったの様に振る舞っていたのか? 何時もは変な奴で終わる筈なのに、彼の場合はそれで終わらなかった。 相手は男だ。 しかも、自分が一番関わりたくないタイプの筈なのに。 わからない。 何がわからないって、自分が一番わからない。 「こらぁ!そこー!走らない!ちゃんと列になって!」 ・・・ああ、何だってんだ。 「・・・ホントにうるさい・・・」 「そうかよ」 同じ事しか返さない隣の奴に少し苛つきながら、狭いソファーに無理やり寝転び寝る態勢を作った。 ⇒ [*前へ][次へ#] |