Sole
始まり
ソーラは驚くほど手のかからないガキだった。帰ってきた母親が存外喜んで世話していたが、三日も過ぎればハイハイしだし、一ヵ月でつかまり立ちするようになり、一ヵ月半で離乳を終えた。
そしてまったく泣かない赤ん坊だった。快や不快は示すけれどついぞ泣き声を聞いたことはない。
それが異常だと、さすがに疎いオレでも気付いたが、ソーラはソーラで何も変わらない。母もこの子もボンゴレだとむしろ恭しく丁重に扱いだした。
不器用にしか構えなかったが、紫の瞳は相変わらずきらきらと輝いていた。
乱暴な言葉をかけても手を繋ぐと笑う。苛々して炎を見せても怖がることなく嬉しそうにじゃれつく。睨み付けるだけで大人も怯み、手をかざすだけで周囲から人が消えることの多かったオレにとって新鮮な反応だ。
「てめえはオレが怖くねーのか」
ソーラは少しだけきょとんとしたが、まるで肯定するように満面の笑みを浮かべてしがみついてきた。
「……そうか」
そうっと抱き上げてあやすように揺らしてみる。どこもかしこも小さくてふにふにした体だ。簡単に壊れてしまいそうな、守ってやらないといけないような。
(ソーラはオレが守ってみせる)
大切な妹、家族として。
すっかりお兄ちゃんねえ。そんな姿を見て、ソーラが来てから家に居つくことの多くなった母親に笑われたが、あまり悪い気はしなかった。
「君は確かに、私の息子だ」
そう言って九代目がオレを引き取ったのは、ソーラと出会ってから一年が経ったくらいのことだ。
家族愛だとか無償の愛だとか、そんなものを受けとめるにはオレは冷めすぎていたけれど、一人で歩けるようになっていたソーラがジジイにつかまって笑ったから、この男についていくのも悪くはないと思った。
オレはそれからボンゴレ十代目、ジジイの跡取りとしての道を歩いていくことになる。
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次からソーラ視点です。
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