Sole
出会い
そのガキと出会ったのは確か四歳の頃だった。帰ってこない母親を仕方なく探しに出た日のことだ。確かしんしんと雪が降っていたように思う。
冷たい手のひら、白く凍る吐息、暖を取るため灯した炎もなかなか追い付かないような寒さ。
そんな中、通り掛かった真白く染められたチャペル、その前に置かれた籠の中から、無垢な表情でこちらを見つめた赤子。
オレの赤に似た紫の瞳を、柄にもなく美しいと思った。
「てめえ……ひとりか」
無意識に差し伸べた手は小さな手のひらに包み込まれる。伝わる温もりは気温に不似合いなほどだ。向けられた純粋な笑顔が新鮮だった。
気付いたときには拾って連れて帰っていた。金はスリでもすればすぐに集まる。捨てられただろうこの赤子を、自分が育ててみたかった。
「……名前がいるか」
暗い家を炎で照らす。ガキはなぜか嬉しそうに笑った。柔らかい頬を突いてみる。また小さな手でオレの指を握り締めた。
久しぶりに暖かいような不思議な気持ちになった。
「ソーラ。てめえはソーラだ」
オレに温もりをくれる生きもの。知らないうちに抱いていた寂しさを埋める存在。太陽のような、この赤子。
オレのベッドにそっと寝かせて不慣れな手つきながらも頭を撫でる。赤ん坊はぽやぽやと和やかな雰囲気を漂わせ、こちらを信頼仕切ったようにすやすや眠りについた。誰かが面倒を見ないとすぐに死んでしまう存在。
「オレが育ててやる」
炎にしか興味のない母親も本当かどうかもわからないマフィアのドンの父親も知らない。オレの家族はこいつだけだ。
そのときから、ガキ――ソーラはオレの妹であり、唯一のFamigliaになった。
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