luna
月と散った花びら
ぼんやり考え込んでいると皆が帰ってきたのを感じ、出迎えた。怪我はないが全員疲れた表情をしているのを労いながら迎え入れてやる。
「G、デイモン、ランポウ、雨月、お疲れ。ナックルとアラウディは?」
「ナックルは子供が心配だって教会に、アラウディは報告書を書きに帰った。その内来るから彼女によろしくだとさ」
「そうか、わかった。ありがとう」
各々自室に戻っていくのを見送ってからメイドに彼女の部屋へ案内させた。ゲストルームでオレの部屋に一番近い一室をあてがったようだ。ありがたい。
真ん中のベッドに寝かされた彼女は、少し血色が良くなり更に美しく見えた。幼い輪郭に綻び始めた花びらのようなパーツが完璧なバランスで配置され、大人になり始めた儚い美しさを持っている。
開きかけた花は、下卑た男の手で無惨にも散った。
悪夢でも見ているのだろう、うなされてこぼれた涙を拭う。触り心地のいい黒髪をさらりと撫で、一房手に取ってキスをした。
「今はただ、安らかな眠りを……」
もう一度宥めるように撫でてから部屋を出る。夜も更けてしまった。そろそろ寝よう。
外を見上げれば月が冷たくも優しくも見える光でこちらを照らしてくれていた。
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