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luna
紅茶と友とバカップル
 コンコン。控えめなノックの音がする。
 ちょうどルナが戻ってきたようだ。
 銀色のワゴンを押しながら入ってきた彼女は、手際よく四人分の紅茶を淹れた。

「お待たせしました。どうぞ」

 ソーサーに載った白いカップ、満たされた濃い色の茶、立ち上る香りは上質なアールグレイのもの。
 これはかなり美味しいだろう。

「いただきます」

 熱い液体が口内を満たして喉を落ちていく。やわらかな苦みに確かな甘み。そして鼻腔をくすぐるすっきりした爽やかな香り。すべてが素晴らしく重なり合ってお互いを引き立てていた。

「美味しい。ありがとね、ルナ」
「いいえ。そうだ、こちらも召し上がってください。イギリス式では紅茶を飲むときに、軽食を一緒につまむそうですから」
「へえ……美味しそう。こんな飲み方どこで覚えたの?」
「前にイギリスからいらした方を癒したことがあって。その時にお礼にとお茶を淹れていただいたんですけど、作り方も教わったんです」

 にっこりと笑ったルナが指した先には三段になったトレイがあった。サンドウィッチやケーキ、スコーン、クッキーなんかが載っている。それもまた美味しそうだ。

「コザァート、それは全部ルナの手作りだ」
「……ジョット、本当にいい子と巡り合ったんだね」

 きれいで料理上手で一途で、それに確か癒しの聖女とも呼ばれたほどの子。そんな女性はなかなかいない。
 ジョットが当たり前だと同意したのに照れてしまったのか、彼女が恥ずかしそうに俯いた。

「コザァートさん、プリーモ、ありがとうございます」
「ルナ、今はプリーモと呼ばないでいい。どうせ内輪の席だ」
「えっと……構いませんか?」

 おずおずと僕とGを伺ったルナに微笑んで頷いてやる。もちろんそんなことを構うわけもない。Gも気にすんなと言ってやっていた。

「あ、敬語もいらないからね。そんな偉い身分じゃないし、気楽に付き合ってほしいな」
「――わかったわ、コザァート。さすがジオの親友ね、素敵なひとだわ」
「そうだろう? ずっと会わせたいと思っていたんだ。コザァートが来てくれて助かった」
「僕もジョットの手紙を読んでからずっと会いたいと思っていたからね。会えて嬉しいよ、ルナ」
「私も…………あなたがいなかったら、きっと私はジオと出会えていなかったから……あなたが、ジオに自警団の設立を奨めてくれたから、私は今、生きてここにいられるから。会えて本当に、嬉しい」

 はにかんだ顔があまりにも可愛くて、隣のGをばしばし叩いた。Gも同感だったようで無言で頷いて宥めてくれる。
 ジョットとルナが顔を見合わせて首を傾げる。

「そんなに悶えてどうしたんだ?」
「この天然カップルがっ……!」





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