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luna
別離
「最後に一つ、ルナに言っておきたいことがある」

 これはおそらく最も重要になるだろう。彼女の身の安全のためにも大切なことだ。

「おまえの炎の特性が何か、自分で気付いているか」
「癒しではないのですか?」
「違う。Gたちは?」

 周囲の面々は黙って首を振った。誰も気付いていなかったらしい。ただ一人、デイモンだけ、こちらをまっすぐ見つめて答えを口にする。

「彼女の特性は、治癒ではなく回帰。違いますか?」
「合っている」

 そう。癒えているように見えたのは、かざした炎が「怪我をする前の状態に部位を回帰させた」からだ。それはまるで月が巡り巡ってまた同じ姿を見せるように。
 病気が癒えないのも「回帰させる部位が無意識にでも理解できていないと焼くことが不可能」だから。

 オレ自身も、はっきり確信したのはつい最近だが。

「ルナ、その炎は何より強い力になり得る。だかマフィア、それもボンゴレに敵対する奴らにとっても格好の標的になってしまうんだ。オレの力を防ぐ唯一の方法だからな。だから、おまえの能力が気付かれないようにしてくれ。もちろんオレたちも出来る限りのことをするから」
「わかりました、プリーモ」

 彼女は神妙な顔つきをしてしっかり目線を合わせた。ブレない視線は真摯な思いを伝えてくる。相変わらず美しく輝く紫。それと炎に、魅せられた。

 本当はこの役職でさえ危険だと思っている。させたくない。けれどアメティスタが望むなら、オレは今だけ、この手を放そう。

「……荷物の準備をしておきなさい。明日か明後日には教会に向かうことになる」

 彼女は黙ったまま一度頷いてみせて、震える指でオレのマントの裾を握る。少し潤んだような瞳が僅かに揺れたかと思った瞬間――胸板に体温を感じた。背中に回されたしなやかな腕。そして確かな柔らかさ。
 アメティスタが強く抱きついていた。

「行ってきます、ジオ」

 この一年、彼女はずっとオレのことを「プリーモ」と呼んだしオレも彼女を「ルナ」と呼んでいた。それが二人のけじめだった。だが今は「ジオ」と。これはきっと彼女の一片の甘えだ。

「ああ……いってらっしゃい、アメティスタ」

 それならオレも、彼女自身に付けた名を呼んで送ろう。
 仲間を見送るボスとしてではなく、恋人を見送る男として。

 俺の腕の中に華奢な身体を収める。少し赤らんだ顔に浮かんだ笑みの愛らしさも、涼やかで甘やかな声音も、すべてオレだけのものだ。見せてなんかやらない。

「…………見せ付けすぎだものね」
「離れなよルナ。それは挨拶の域を越えてる。結婚もしてない、教会に行こうかという娘がそんなことしちゃ駄目だからね」
「プリーモも少しは自重しやがれ。オレらの存在抹消しやがったろ」
「仲良しでござるなぁ」
「うむ!」
「本当にしょうがないひとたちですね」

 守護者たちの呆れ声など、気にするものか。





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