luna
夜空を照らし癒す月光
アメティスタは守護者たちと仲が良い。Gや雨月、ナックルにランポウはもちろんのこと、アラウディとも顔を合わせれば楽しそうに話しているし、デイモンともまったりとお茶会をするくらいだ。
あの個性的な奴らにも気に入られ、部下からの支持も根強い彼女を、今更低い地位になどつけられない。
私室で寛ぎながらも悶々と考え込んでいた、そんなとき。ドアが軽くノックされ、返事する前に開けられた。
「プリーモ」
「何だ? アラウディ」
「ルナのことなんだけど、僕の作ってた組織あるでしょ。あれのトップに据えてみない?」
それならボンゴレ部外者でいられる上に有事には幹部だし。つかつか部屋に入ってくるなりそう言い放ったアラウディの提案は、なるほど、悪くないものだった。
「悪くないが……おまえは構わないのか? 作るために奔走していただろう」
「下手に他の部署に行かれるよりいいよ。スペードに取られでもしたら最悪だしね」
「わかった。……そうだな、そうする」
「ん。下には伝えとくから」
顔には出さないものの大分上機嫌になって部屋を後にしたアラウディは、相当彼女を気に入っているらしい。前にあの子を泣かせたら許さないから、と言われたときは、おまえの方こそ父か兄のようだと思ったものだ。当然ながらそれには当たり前だと返したわけだが。
(アメティスタを泣かさないためなら、死の淵からでも甦ってみせるさ)
しかしアラウディがそんな申し出をしてくるとは予想外だった。門外顧問組織――チェデフは、ボンゴレ自体に所属するのを嫌がった彼がオレやGに直談判を繰り返した上で作ったものだから。
誰かの下につくことを嫌い、自由気ままに生きるあいつらしい組織だ。自分の正義がオレと重なったときだけでいいように取り決めた条件は確かにアメティスタ向きでもあった。
門外顧問という身分であれば必ず誰かを護衛につけていることも可能だし、後方支援を頼むことも容易だ。
そして平時はボンゴレでなくていい。つまりマフィアなのは有事のみだ。
「ボンゴレでありながらボンゴレでないもの、か」
ボンゴレの有事、すなわち夜を照らす月光。考えてみればこれほど月を体現したような部署もない。
日輪が輝くときはかき消されるけれど、日光が届かないときは、大空が抱くもの――天候もひともすべてを平等に包み込む。
早急にアラウディ以外の守護者も集めて話してみることにしよう。きっと概ね賛成だろうから。
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