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luna
夜を駆ける
「助けてくれ! 命だけは、頼むっ」
「貴様ごときの願いを聞き届けるとでも? 既にボンゴレの住民を傷つけたディスフィオラーレは敵だ。生かしてはおけぬ」
「なら、実行犯を教えるから、俺は助けてくれよ!」

 でっぷりと太った中年男が醜く命乞いをしている。不様なことこの上ない。弱く汚く自分のことしか考えないこんな男に彼女は汚されたのだと思うと、苛立ちが止まらなかった。

「実行犯はもう既に始末している。次は指示した貴様の番だ。死ね」

 そいつの持っていた武器はすべて破壊した。体術だけで戦えるほど強くもない。這いつくばってでも逃げようとした背中を踏み付け、ためらいもなく撃ち抜いた。追加で二三発撃って確実に絶命させる。

「珍しいね、君が銃を使うなんて」
「触れたくもなかったからな。グローブが汚れる。こんな下種に彼女は……」
「燃やしてしまえばいいのに」
「その価値すらない」

 隣で見ていたアラウディはそう、と頷いた。腕にはマントにすっぽり包まれた彼女を抱いている。閉じられたバイオレットの瞳は未だ開かない。

「帰るぞ、外も粗方終わっているだろうしな。後始末の指示はGに頼もう」

 アラウディから少女を受け取って屋敷を出た。案の定周囲は静かなものだ。守護者たちが集まってくる。彼らはオレの手元に目を止めて、それから一様に眉をひそめた。

「そいつがか」
「ああ。好きなようにされていた」
「究極に哀れだ」
「許せないんだものね!」
「少女は慈しむべきものです。んー、殺しておいて正解でしたね」
「守れなかったのが口惜しい。幼き娘を手ごめにするなど、人道に反する所業でござる」

 思い思いに怒りをこぼす連中に苦笑を浮かべ、ゆるく頷いた。いくら有用な力を持っていたとしてもこんな仕打ちをしていいわけがない。

「G、後始末は頼んだ。オレは屋敷にこの子を連れていく」
「わかった。おいランポウ! 片付けさせろ。アラウディは事の処理を頼む。スペードは――」

 てきぱきと指示を出していくGを尻目に、フィアットに彼女を乗せアジトへ戻る。早く服を着せて休ませてやりたかった。





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あきゅろす。
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