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luna
悪夢の残滓
「それじゃプリーモ、僕は戻るよ」
「ああ、そこまで見送ろう」

 宵の口を過ぎた頃にアラウディが席を立ち、共に立ち上がったオレにアメティスタがそっと寄り添う。不安そうに下がっている眉に笑って手を握った。

「おまえも行くか?」
「……ええ」

 儚げに笑い返す彼女を連れて玄関に向かう。部下に擦れ違うたびびくりと竦む体をさり気なく抱き寄せ、アラウディから呆れた視線を投げ掛けられながらアメティスタと一緒に歩いた。
 ボスが愛玩する娘だと、囁かれているのが聞こえたが、あながち間違ってもない。共依存する愛し子だ。

「大丈夫か」
「ええ。ジオがいるもの」
「……本当仲良いよね、君ら」
「当然だろう」

 ふふんと勝ち誇ってみせればますます冷たい視線が返ってきた。行く道すがらで他の守護者たちとも合流し八人の大所帯でエントランスに向かう。
 こんな見送りはいらないのに、と小さくぼやいたアラウディも、まんざらでもなさそうに微かに笑った。

 彼女は守護者たちとならば、少し緊張はしているものの、自然に振る舞うことができるようになってきた。それを微笑ましく見つめていざ外に出ようとした、そのとき。
 玄関の扉を開く直前、脳内で警鐘が鳴り響く。

 一瞬にしてぴりぴり張り詰めた空気に他の皆も警戒を強めた。一応痛む手にグローブを着けて気を抜かずにゆっくりと扉を開けた。瞬時に弾丸がこちら目がけて飛んでくる。
 突き出した左手の炎で溶かしているけれど、なにぶん数が多い。アメティスタがランポウの背に庇われているのを確認して外に飛びだした。

「援護は頼むっ」
「プリーモ! 無茶はするなよ!」
「ああ!」

 炎を体にまとわせながら急所を狙い打ち据えていく。殺さないための加減が難しい。殺してしまっても構わないといえばそうなのだが、情報も必要だし、何より彼女にそんな状景を見せたくなかった。
 抱き寄せた体を思い出す。華奢で儚げでふとしたら消えてしまいそうな、けれど確かに温もりと重みが存在する身体。傷つけるすべてから守ると誓った。

(待っていろ。怖いものから守ってみせるから)

 跳んで殴ってかわして焼いて。なかなか敵の数は減らない。きっとボンゴレより大きなファミリーが関わっているのだろう。一人一人の能力は大したことはないが連携が強い。
 指示を出しているらしい男を睨んだ。

「……いきなりうちを狙うなど、何が、目的だ!」
「ディスフィオラーレが聖女を得たと噂でな。狙っていたらボンゴレに先を越されて潰されただろう? 癒しの聖女を探しついでにお礼参りだ」
「下らん理由だな、!」

 余計に彼女にこいつらを近付けるわけには行かない。せっかく癒えてきたと言うのに、今日の恐々とした様子みたいにまた壊れてしまうかもしれない。大切に大切に守ってきた宝石を砕かせなどするものか。

 オレの覚悟に応えるように、グローブに灯る炎はその勢いを増した。





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