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luna
愛し子、深まる依存
「今日はオレとだ、アメティスタ」
「え?」
「おまえの警護の担当になったんだよ。だから今日は一日一緒だ」

 Gが昨日、明日はてめえがやれと認めてくれたのだ。まあ、アラウディもつけるのが条件だが、それくらい大歓迎。彼女もオレとなら少しはリラックスしてくれるだろう。

「本当?」
「ああ」

 予想通り嬉しそうに顔を綻ばせる彼女の頭を撫でる。オレ限定だがタッチコミュニケーションにも慣れてきて、体を強張らせることもなくなってきた。

「他にもアラウディがいるがな」
「アラウディさん、って、ジオと一緒に私を助けてくれたひと?」
「そうだ。覚えているのか」
「うっすらとだけど、顔は覚えてるわ。ジオとは違うけれど、きらきらした金髪が綺麗だったもの」

 一瞬であいつらがいなくなって、ああ、神様と天使なんだわって、思ったの。ぽつりと呟いたアメティスタを、ぎゅっと抱き締める。
 もう大丈夫だろうとは思うが、あの時の絶望にまみれた瞳が思い出されて怖かった。

「アメティスタ、必ず……オレが必ず、守ってみせるから」

 声もなく強くなった抱きつき返す力と、それと同時の肩の濡れた感触が、とてもか弱く愛しく感じた。オレが彼女の芯になれるならそれでいい。強く一人で立てるようになる、その手伝いがしたい。
 寄り掛かられる温もりが手放しがたい宝物に思えた。この存在が消えてしまったなら、オレはどうなるだろう。きっと心の中の何かが壊れてしまう。

 彼女を支えることで支えていた自我を、なくしてしまう。

「…………行こうか、アメティスタ」
「ええ。ありがとう、ジオ」

 何の疑いもなくオレにすべてを預ける少女に微笑んで、いつものようにエスコートしながら執務室へ向かった。

「アラウディ、おはよう」
「うん。君もおはよう」
「おはようございます」

 中で優雅にコーヒーを味わっていたアラウディと挨拶を交わす。アメティスタとアラウディもそれなりに和やかな様子だ。
 オレはそれと真逆に毎日変わらずに積み上げられた書類にため息を吐きながら椅子に腰掛けた。

「お仕事頑張ってね、ジオ」
「ああ」
「休憩したくなったら言って。エスプレッソを煎れるわ」
「ありがたいな。また頼む」

 最後にちらりと笑みを交わしてそれぞれ視線を外す。アラウディと彼女は時折邪魔にならないくらいにぽつぽつ会話していた。

 守護者と彼女の仲が深まるのは、好ましいことだ。





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あきゅろす。
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