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luna
おはようからおやすみまで
 一日の始まりと終わりは、必ずそばにいる。それは彼女がこの屋敷に来てから自然と身についた習慣だった。
 アメティスタが眠るまで横でゆったり見守り、朝は彼女の部屋に行って起こして、それから二人で朝食を摂る。

 会話がないときも多いけれど、二人の間には穏やかな時間が流れている。

 今日もそうだった。朝起きてすぐに彼女に会いに来て、寝起きの彼女が身支度を済ますまで待ち、食堂でパンを食べる。
 食後の紅茶を楽しみながら、ふっと思い出して声をかけた。

「そうだ、今日も誰か守護者をつけるが……大丈夫か?」
「ええ。慣れないと、いけないもの。本当に無理だったら一番にジオのところへ逃げ込むわ、大丈夫よ」
「なら、良いんだ。今日はオレの相棒と雨月が一緒だからな。少し独創的な髪型の奴もいるが」
「えっと、Gさんとスペードさんかしら」
「ああ」

 わかったわ。そう言って笑ったアメティスタの頭をそっと撫でる。だいぶ自然な笑顔も増えてきた。まだまだトラウマは根強いようだが、少しずつでも前に進めるなら構わない。

 彼女を連れて執務室に行き、そこでGたちに会わせる。今日の担当の三人は既に揃っていた。

「遅ぇよジオ」
「済まん、G。彼女を頼む」
「ああ。つーわけで、付いてきてくれ。昨日と部屋を変えるから」
「はい」

 威圧しないよう、近づきすぎないよう、気を遣いながら彼女に接する様子に安心した。やはり頼れるオレの相棒だ。雨月は緊張気味の彼女にほわほわ声をかけている。
 ただ、デイモンだけはあまり話さず観察するように鋭く彼女を見つめていた。

 何だか不穏な気もしたが、悪い感覚もなかったのでGに任せることにする。最後に一度、アメティスタに向かって微笑むと、彼女も小さく笑ってくれた。

「……さて、やるか」

 四人が出ていった部屋の中、またそれなりの厚みのある書類の山に泣きたくなった。ざっと目を通しても気になる報告はない。

(またサインのルーティンワークか……)

 他マフィアの動向、領地の保安、財源の確保、多岐に渡る報告書はどれも一つ一つは大したことではない。もう何年もやってきているからいい加減慣れた。
 しかし、量を考えてほしい。何故毎日チェックしているのに一日でこんなに溜まるのだろうか。

 オレもアメティスタとお茶したい。切実に。うんざりした気分でペンを走らせるオレは、守護者たちの仕事も加算されていることに気付きもしないで、いつもより多い書類を黙々と片付けるのだった。





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