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luna
共依存関係
「だいぶ立ち直ったみたいじゃない、彼女」
「だがてめえに依存しすぎだな」
「ジョットも彼女を守ることに依存してるみたいだね」
「……そうだな」

 アメティスタを送り届けてから戻った執務室で掛けられた、アラウディとGの言葉は的確だった。彼女がオレから離れたがらず、この存在に縋って依存しているのは一見してわかるし、オレ自身も彼女を支えることで自分を支えている節がある。
 揺るぎない大空ではいられない腑甲斐なさは悔しいが、事実は事実なのだ。

「それが一概に悪いとは言わねえが、良いとも言えねえのはわかってんな?」
「ああ。……彼女には、戦う力が欠如している」
「プリーモの周りは一番強固な守りですが、言い換えれば最も危険だと言うことですしね」

 ボンゴレはまだまだ新興勢力だ。それなりの地位を築いてきたとは言え、敵は多い。オレの命も近しいひとも狙われる。
 アメティスタがそんな危険な目に遭うのは嫌だ。オレが守るにしても、最低限自衛できる力がなければ難しい。

 だから、長く滞在させるわけにも行かない彼女とオレが今のままの関係であれば、困った事態になる。

「せめて力か覚悟があれば良いのでござるが……」
「今の状態なら、究極に難しいと思うぞ」

 依存を脱するのが早いか、それとも力をつけるのが先か。それは読めないが、一つだけ直感したことがある。

「彼女の炎が安定すれば、あるいは――」
「ジョットみたいなことができるとでも言うの?」
「それはわからないが、近い感覚はした。貴様らの炎にも似ているかもしれない」

 オレを治したときにきらめいた、強い意志の輝き。それは命を懸ける覚悟に似ていた。彼女独自の死炎とも呼べるかもしれない。
 あの炎は、ただ真っ白なだけではない気がするのだ。

「まあ、今んとこは様子見しかねえな。ジオ、てめえ気張ってろよ」
「わかっているさ」

 彼女がオレの手を離れるまで、いやその後も、ずっと守りぬいてみせると誓った。一応はこの屋敷の中は安全だろうが、気は抜けない。
 正直、早く仕事を終わらせて彼女のそばに行きたいくらいだ。

 そわそわと落ち着かないオレを宥めるように、煙草を吹かしながらGが笑った。

「ま、いざとなりゃ銃の扱いでも教えてやるよ」
「なら僕は捕縛術だね。人体の急所とか力の抜かせ方とか教えてあげよう」
「俺様は……あ、逃げ方教えるものねっ」
「ヌフフ、心理戦でも仕込みましょうかね」
「ならば拙者は非力な女子でも使えるような護身術を」
「ボクシングは女性にはあまり向かんからな。体力作りをしてやる!」
「…………これはこれは、頼もしいな」

 最強とも謳われるファミリーが総出で指導するなら、これほど心強い悪漢対策もあるまい。それぞれが教えるのが戦闘に特化したものでないのも重要だ。

 これなら、ひとを傷つける覚悟がないだろう彼女でも、しっかりと身に付けられる。

「ならオレは、零地点突破でも教えようか」

 冗談半分本気半分で呟いた言葉だったが、しかしすぐさま守護者全員に全力で阻止されたのだった。





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あきゅろす。
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