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luna
花開く
 かたかたと震える手にオレの手を重ね、労るように見上げた。ほのかに青ざめた顔は表情をこそげ落としている。こちらの視線に気付いた彼女は安心した様子で笑ってみせる。

「大丈夫か?」
「ええ、ジオがいるもの」

 今、オレの執務室に二人でいるのは、これから守護者たちにアメティスタを会わせるからだ。一気に六人は多くないかと思ったけれど、一度にまとめた方がいいと言う彼女のたっての希望だったので、全員を呼び出した。
 ドアがノックされる。重ねた手が大きく跳ねた。ぎゅうっと握り締めて返事する。

「入ってくれ」

 Gを先頭にランポウ、ナックル、雨月、デイモン、アラウディが入ってくる。オレの隣で裾を握りながら身を縮める彼女に目をやって、それからじっとりとオレを見た。
 意訳するなら「か弱い少女に何手を出しているんだこの野郎」あたりが妥当だろうか。そんな視線はすべて無視してにこやかに告げる。

「紹介する。彼女が太陽の聖女だ」

 す、とアメティスタが一歩踏み出して深々と一礼した。怯えを振り切って凛と伸びた背筋は美しく、少し陰を帯びながらも輝く紫は高貴さを感じさせ、彼らが興味を持つには十分だったようだ。

「この度は、ディスフィオラーレより助けていただきまして、本当にありがとうございます。これからボンゴレの保護下に入るとのこと、どうぞよろしくお願い申し上げます」

 微かに震えた、しかしよく通る声で述べたアメティスタは若干顔を強張らせながら笑った。守護者たちも順番に名乗っていく。

「……ああ、よろしくな。オレはGだ」
「雨月でござる」
「ナックルだ!」
「俺様はランポウだものね」
「スペードです。よろしく」
「……アラウディ」

 アメティスタではなく、親からもらった名を名乗っている彼女の横から、少しだけ口を挟む。

「ここにいるとバレては厄介だからな、彼女の本名は呼ばないでくれ。あの夜、ディスフィオラーレと共に太陽の聖女は死んだことにする」
「てめえは、それでいいのか」
「はい。私からお願いしたのです」

 名前を伏せるのは俺も考えてはいたことだが、聖女の死は彼女の希望だった。どうしても死んだことにして欲しいと頼まれては断れない。確かにその方が都合もよかったのだが。

「私はあの時一度死に、そしてジオが私を生まれ変わらせてくれたんです。だから、構いません」

 後に彼らは語った。その瞬間の彼女は、何より美しく微笑んだと。あどけなさが消え、艶やかな大輪のバラのように魅入られる笑みだったと。
 事実、目の前の守護者は全員彼女を見つめ、息を呑んでいた。

「まあ、顔合わせはこんなものでいいだろう。疲れただろう? 部屋まで送る」
「ありがとう、ジオ」

 惚ける奴らを横目にオレはさっさとアメティスタをエスコートして執務室を出た。まだ不安定なままだから長く起こしていたくない。





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