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luna
彼のために火は灯る
 まだ儚い、けれど確かに闇は薄れた印象を与える少女は、こちらをまっすぐに見つめた。

「ねえ、ひとつだけ、お願いしてもいい? 名前をつけて」
「名前を?」
「私は今、新しく生まれたの。あなただけに呼ばれる名前が欲しい」

 ささやかながらも深い意味を持つ願いを、オレはもちろん聞き届けた。彼女の生きる意味にさえなるものだ。断れるわけがない。

「ならおまえは、アメティスタ」
「アメティスタ?」
「ああ。よく、似合う。そうだ、オレもジオと呼んでくれ」

 ありがとう、ジオ、と。彼女――アメティスタは初めて心底嬉しそうに笑った。息を呑むほど美しいその笑顔がいとおしい。
 ゆっくりと身を起こし、白い指がオレの傷に触れる。

「あなたの手のひら、傷が深いわ。治させて」
「ああ……でも、おまえの方が酷いし、それに震えている。無理するな」
「大丈夫よ。治したいの」

 震える指先に力が籠もり、思わず痛みに顔をしかめる。しかし瞬時に白い炎が薄く傷口を覆う。見る間に派手な出血は止まり、痛みが薄れ、えぐれた肉が戻っていった。
 彼女の手のひらもオレより遅いスピードだが炎を浴びて治っていっている。

「すごいな」
「まだ少し、癒すのは怖いけれど、あなたのためなら、できるから。無理はしてないから」

 怯えているのは、無理やり癒させられた記憶が蘇るからだろう。すっかり治った手のひらを眺めながら思う。落ち着かせるように抱きしめた。

「ありがとう、アメティスタ」
「いいえ。これだけではお返しにならないかもしれないけど、でもあなたの怪我は私が必ず癒してみせるわ」
「それは嬉しいな」

 傷は未だ癒えずに深く痕を残してはいるけれど、穏やかな表情を浮かべるアメティスタに少なからず安心した。

「私、ボンゴレの皆さんに、挨拶したい」
「わかった。でも、本当に無理はするなよ」
「大丈夫。ジオの大切なひとたちでしょう?」
「……ああ。あいつらもおまえに会いたいと言っていたから、ちょうど良い」

 だが今日はダメだ。そう言えば、彼女は楽しげに笑って頷いた。



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あきゅろす。
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