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luna
穏やかな一時
「ほんと、ボスはあの子に甘過ぎるんだものね」
「そうか?」
「自覚していなかったのですか?」
「まあ、ジョットだからな。素で甘やかしてんだろうさ」
「僕たちも近付けさせないでしょ。娘を守る父親みたいだよ」

 彼女が目覚めてから一週間たった今日、守護者たちと定例会議を行っていたところ、ランポウ始め皆が口々にぼやいた。
 オレにはだんだん慣れてきたとはいえ、まだ恐がっている節がある彼女に会わせないのを不満に思っているらしい。
 しかし父親は言いすぎではないだろうか。

「そんな過保護なつもりはないがな。当然のことだ」
「だが究極に会ってみたいぞ!」
「そうでござるな。無理をさせる気はないが、できるなら会わせてほしいでござる」
「そのうちな」

 彼女が自分を汚いと思わなくなって他人に会いたいと言いだしたら、会わせてみてもいいだろう。それもたぶんずっと未来だ。無理はさせたくないし早急に治るとも思わないから。

 断じて、独り占めしたいとか、見せたくないとか、そういう感情から反対しているわけではない。

「しかし、てめえがひとりにそんな固執するなんてな。言っちゃ悪いがただのガキだろ?」
「……見ればわかるさ」

 空虚ながらも美しい宝石のような瞳に、一度だけ目にした導くように揺らめく炎、儚くも麗しい声音、その存在のすべてに魅せられる。
 寄り添うのは闇だけれど、心が抱くのは真白な光だ。本質はきっとオレに近い、すべてに染まりすべてを包容する大空。

 それを見抜けば、惹かれずにいられない。

「確かに、あの子の炎は綺麗だったね。太陽もあながち間違ってないくらい」
「ふーん、俺様見てみたいんだものねっ」
「アラウディが言うなら、相当なんでしょうね」
「まあ見せる機会は遠いだろうがな」

 ぼそりと呟いたオレに六対のじっとりした視線が集まったのだった。

「究極に過保護ではないか」
「ジョット、独占欲が強すぎるでござる」
「違う! 彼女はまだ状態が良くなくて、」
「だからって見せるはねーだろ。せめて見るくらいにしときゃ良かったのに」
「君さ、天然だよね」
「残念な方です」
「ボス、やっぱりあの子の父親になりかけてるものねー」

 守護者たちはオレに容赦がない。一応形だけでもボスなのだから多少は遠慮してくれてもいいと思う。

「うるさい貴様ら! 何を言ったってまだ彼女には会わせんからなっ」
「まあまあジョット。本当に彼女が元気になったら、目通り願うでござるよ」

 結局雨月がオレたちを宥めて会議はお開きになった。
 なぜだか嫌な予感がする。オレは彼女の部屋に急いだ。





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あきゅろす。
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