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luna
太陽
「ジオ、ちょっといいか」

 ノックの音とほぼ同時に扉が開いてGが入ってきた。手には書類を持っている。

「追加だ」
「チェックか?」
「おう。たぶんまだ増えるぜ」
「……やりたくない」
「そう言うなボス。おまえにしかできねえんだ」

 ぼやいたオレの頭を軽く叩いて笑う相棒。幼いときからずっと一緒だから気心も知れている。オレを大空と表したのはコイツ、コイツを嵐と表したのはオレ。唯一無二の大切な存在だ。

「まあそれは冗談としてだ。どこの部屋でもいいだろう? ペンとインクを持ってきてくれ。オレはこれから彼女が起きるまでここで仕事する」
「……わかった。その代わりちゃんとやれよ」
「ああ」

 何も言わないでも察してくれたようだ。ペンを取りに行ったGを待つ間、渡された書類に目を通す。ディスフィオラーレの残党の始末が大体完了したらしい。

 百人は軽く越える犠牲者に少しだけ良心が痛まないこともない。だが、薬物売買や市民からの搾取などかなりあくどいことをしていたから、いつかはこうなっていただろう。
 たまたまボンゴレが守る市民に手を出したから、オレたちが始末しただけ。

(自業自得でしかないな)

 命令されていただけの下っぱは哀れだが仕方ない。そんな組織に入った自分を恨んでくれとしか言えまい。冷たいようだがこれがマフィアだ。

 Gが再び部屋に入ってきた。ペンやインクだけでなく、水差しなど、細々とした看護用品を手にしている。

「……気が利くな」
「そこでメイドに渡されたんだよ。看病をよろしくと言ってたぜ」
「わかった。貸してくれ」

 Gからそれらを受け取ってサイドテーブルに並べていくと、卓上いっぱい埋め尽くしてしまった。仕方がないので書類は少し離れたテーブルに置く。少し彼女から遠ざかってしまうが、同じ部屋なのでよしとするしかない。

「G、何か用事があればこの部屋に来てくれ。くれぐれも静かに頼む」
「了解。……なあ、一つだけ忠告しておくが、ソイツにあまりハマり過ぎるなよ。一般人なんだからいつかは離れる」
「わかっているさ。太陽にさえたとえられた聖女に、こんな場所は似合わない。ただ、ボンゴレの庇護下にいる間だけでも、守りたいんだ」
「まあ、好きにすりゃいいがな。辛いのは、おまえだ」

 案じるような視線を黙って微笑むことで受け流す。もう決めてしまったのだ。オレの決意は揺らがない。それを感じ取ったのか相棒はもう何も言わずに出ていった。
 心配はありがたい。けれど今は彼女を離したくない。

(独りで泣く様子は、見たくないんだ)

 日の当たる場所が似合っただろう少女は今、闇に抱かれて安らかに眠る。その寝顔を見つめてから再度書類に目をやって、チェックとサインを続けた。





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