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luna
太陽の聖女
 始まりは一人の少年だった。

「助けて……姉さんを、助けて!」

 オレの足元に必死で縋りつく領地の子供を、振り払えずに連れて帰ったのだ。
 ボンゴレの本部に単身乗り込んできて叫んだ彼は、オレたちが守る街の住民らしい。一目見て嫌な感じはしなかったから構わないだろう、と心の中で言い訳をこぼす。

 錯乱状態に近く泣き喚く彼をソファに座らせて、葡萄色の瞳を覗き込む。落ち着かせることが先決だ。

「話はしっかり聞いてやる。だから落ち着け」

 言うと同時に手のひらを打ち鳴らした。びくりと小さく体が跳ねる。ひどく驚いたようだが、泣き止みはした。安心させるように微笑んで紅茶を置いてやる。

「ひとまずはこれを飲みなさい。それから話したいことをまとめておいで。オレは待っているから。飲み終わった頃にまた来る」

 素直に頷いた頭を撫でて一旦部屋を出る。オレがいない方がまとめやすいだろう。その足で守護者に集合をかけた。
 何だか嫌な予感がする。そう言えば全員欠けることなく集まった。皆オレの予感が外れないことをよく知っているからだ。

 小一時間ほど待ち、少年のいる部屋に七人で入る。多人数に戸惑っている彼にまた微笑みかけた。

「まわりは気にするな、ただの護衛だ。貴様に害は与えない。さて、話を聞かせてもらおうか」
「はい。オレの目の前で父さんと母さんが殺されて、姉さんが連れてかれたんです。姉さんには力があって、自分たちはディスフィオラーレファミリーだって言ってたから、ボンゴレなら助けてくれるかもって思って、」
「ふむ。どこで聞いた」
「これからおまえはディスフィオラーレの役に立つんだからな、って姉さんに言ってたんです」

 ディスフィオラーレは前に抗争したところのはずだ。視線でGに問い掛けても頷きが返ってきた。まだボンゴレの領地を荒らしているらしい。前回が甘すぎたのかもしれない。

 ぼたぼたと涙をこぼす少年に少し心が痛んだ。気の毒だと思うし守ってやりたいとも思う。住民はみんなファミリーだ。彼らを守りたいから作った組織、今動かずにいつ動こうか。

 そのためには少しでも情報が欲しい。酷だが話の続きを促した。

「それで。貴様の姉はどんな力があったんだ?」
「姉さんは怪我が治る炎を手から出せるんです。有名だったから、いろんなところから治してほしいひとが集まってました」
「聞いたことがあるな……」

 太陽の聖女。黒髪にアメジストの瞳をした、キリストの再来とすら呼ばれる少女の話を、どこかで一度耳にした。老若男女や貧富に関係なく、どんな相手でもやさしく癒す姿はまるで太陽だと。

「最初は姉さんを連れていこうとしてただけで、でも父さんも母さんも姉さんをかばったから撃たれて、オレは何にも出来なくて、姉さんにかばわれただけで。お願いします、姉さんを助けてください……!」
「わかった。オレたちに任せておけ」

 力強く言い切ってみせる。すると彼はまたぼろぼろと大泣きした。前と違うのはただ一つ、安心ゆえの涙だと言うところ。オレはこの信頼に応えないといけない。

 市民の安寧のため、また力を奮おうじゃないか。





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