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浪漫とリヤル

「昨日不機嫌だった?」
食堂にて。牛乳をすすりながら尋ねたパンサーを、少し眼を広げワットは見た。
「うん、まぁいつも通りってところじゃないかなぁ」
「あーそっかぁ…。なんかいつにも増してあからさまだったからどうしようと思ってたんだけど」
「でもスルーしたんだ?」
「う」
一言ずばり痛いとこを突くが、ワットに責めるつもりは毛頭ない。煩わしい問題だと思う。今ここにいない彼が不機嫌になるわけだ。
「遅かったの時間」
「う〜ん…ちょっとなぁ…なんかまた近所で、」
そこまで言って濁った語尾を読み取って、ワットが要約した。
「つまり一人歩きは危ないってことね」
「うん」
帰るときはあいつが一人じゃねえか。ホーマーの言葉がワットの頭の中でリフレインされる。
「自分が帰る時はどうしてんの?」
「俺はいいよ。良く知った所だし、」
黒人だし。

そこまで言うとパンサーは喋ることに嫌気が差したのかストローで口を封じた。ずるるともう大して入っていない牛乳を無理矢理吸い切る。基本的に楽しく過ごしたい人なので別れ際の気まずさはそれなりに堪えてるのかもしれない。けれど承知の上でホーマーを送るのだ。良く見知った暗い道を。通る人間の所属によって、危険度が変動する道を。

「やめたら?」
ずっ。ワットの言葉にパンサーはストローから口を離して目を丸くした。
「送るのを?」
「うん」
「嫌だよ」
「今だって嫌でしょ」
そうかもしんないけどさ。口には出さずにもごもごと目で語る。
「…でも」
ぽつんと放つ言葉。
「ホーマーが危ない目に遭うよりずっといいし」






「それ本人の前で言ってあげてよ。すぐに機嫌良くするから」
ワットを見るとにこりと笑っていて顔が熱くなる。
あ、これ図られたかもしんない。
パックを潰しながらパンサーは思った。





END
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痛々しめとみせかけて甘く軟着陸。多分ホマが思ってるよりパンサはホマが好きです。



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