まだら 「黒豹にもね、斑模様ってあるんだよ。知ってた?パンサー」 ワットの薀蓄が披露されるのはしかるべき流れを伴う時もあれば、まったくもって唐突な場合もあり、今回は後者だと思われた。 いずれの場合にしても、パンサーは素直な好奇心を示し、感嘆した。薀蓄を披露するには好都合な相手に違いない。そして今回もいつも通り、好奇心に軽く目を大きくして、ワットのほうを見た。 「え、そうなの?」 「ちょっと見ただけじゃわからないけどね、明るいところで良く見ると、ちゃんと豹柄が見えるんだ」 「へぇ〜〜!」 「背中とか」 ぞわ。 え、何これ。 ワットが言葉を発すると共に、何かが這うような感覚を背中に感じた。 しかしパンサーは気のせいだろうと、相変わらず人の良い顔でワットの話を聞き続ける。 「首とか」 ぞわぞわ。 再び迫る感覚に今度は恥ずかしくも身震いしてしまった。錯覚とも違うらしい感覚に、パンサーは一人戸惑う。ワットは穏やかな顔をしてパンサーを見ている。一見穏やかな笑み。しかしその中に何か不吉なものを感じて、 パシンッ! 蚊に食われでもしたかのように、パンサーが突然自分の首を叩いた。 顔が赤い。耳も赤い。 「やっと気付いたねパンサー」 「〜……!!」 首を手で覆ったまま離そうとしないパンサーを見て、ワットは満足げに笑った。 「虫に食われたって言うにしては多すぎかなぁ」 「み…見える?」 「黒豹の模様が?」 「っ…!」 「背中のほうもスゴそうだよね。この様子じゃ」 「…ど、どうしよワット」 「とりあえず、首はタオルでも巻いておいたら」 急いで鞄の中を探るパンサーを、楽しそうにワットは見ていた。 END ******************** リサイクルネタ。 以前拍手に使用しましたが気に入っていて書き直しました。前のよりも地の文増量。 豹柄をつけたのは誰だよっつー。どうにも隙の多いパンサと、S気味のワト様。 |