薬指の、 「何笑ってんの?」 「ん、いや別に」 パンサーは上目使いでひとつ瞬きすると、それ以上は追及しなかった。その代わりすかさずリンゴとナイフに手を伸ばす。軽く安堵している様子に、ホーマーはまた笑ってしまう。 ふとその行為が似ていることに気付いて、頬が緩んだ。 パンサーがあまりにも容易くリンゴをするすると剥くので、それが簡単なことだと踏んだのがいけなかった。 試しに、と言ってナイフとリンゴを受け取り真似してみるも、リンゴよりも皮のほうが厚くなる始末に舌打ちする。 パンサーは青い顔をしてその様子を見ていた。そしてホーマーが皮を削ぎ落とすたびに 「あッ!」 とか 「ヒッ!」 という声をあげた。 パンサーの恐れていた事態は案の定数分後に起こり、リンゴの白い部分に赤い染みが出来た。弾かれたように動きだし、絆創膏を持って来る。 ホーマーの手を取って、神妙な顔でそれを指に張り付けた。 今リンゴは再びパンサーによって剥かれている。剥きながら、何故か上機嫌のホーマーをちらりと見る。 「ヒヤヒヤしたか?」 「したよ。もー、危なっかしくてさー」 「ふーん」 つい口の端が上がる。悪い気分ではない。 「…なんか…嬉しそうだね」 だって絆創膏は左手の薬指だし。 珍しく心配させるほうだったし。 もう一個やらせろよ、と言うとパンサーはぎくりと動きを止めた。 END ********************* リンゴの季節になってきたので。ホマって本当乙女ですね。 |