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Novel
愛を知らない子ども(GX/使徒覇)




ばさばさっ



手荒な動作で髪に含んだ水気を硬いタオルで取り払う彼に僕はため息をついた。

あぁ、それでは折角の綺麗な茶色の髪がボロボロになってしまうのに。

「何か俺に言いたい事があるのか?」


僕の方を見ず動作を続ける彼は本当に人の視線や気配に敏感なのだと思う。


ま、『商売』の関係上仕方のない事なのだろうけど。

僕はソファから起き上がると、硬く冷たい床に両足を付け彼が腰掛けるベッドに近付いた。


僕に背を向けるように座っていた彼の隣に腰掛けて、それから白いシーツを波立てされるのを気にせず膝を動かして彼の真後ろに移動した。


硬いタオルに手を伸ばせば彼の細い両手は静かにシーツの上に落ちて、そのまま貴族様が好んで収集するアンティークの食器かランプについた垢を拭き取るように手を動かした。

一週間前に触れた時はとてもさらさらしていたのに、その感触は彼が乱暴にやったせいか心無しかボロボロとしていた。


それに今日何度目になるか分からないため息を吐く。


「君さ、少しは自分を大切にするって事出来ないの?」


「下らないな」




僕の言葉に彼は即答した。


「そんな無駄な事をして一体なんの意味がある」


「無駄だってさ…少しは心配してくれる僕の身にもなってくれない?」




淡々と言う彼に僕が呆れたようにそう言えば停滞していた空気が少し揺らいだ。



「ふん、あのような抱き方しかしない貴様がそれを言うか?」



機械が出すような無機質な、しかし僅かに嘲りが感じられる言葉に僕はにやりと口が歪むのが分かった。



甘い言葉とは裏腹に乱暴な抱き方しかしない自分。



相手を肉体的にも精神的にも追い詰めボロボロにさせる、もはや暴力としか言い様が無い愛情表現。



「仕方ないだろう。だって僕にはそれ以外の愛し方なんて知らないんだから」




そう言うと僕はすっかり水を含んで重くなったタオルを床に放り投げると、彼の本当に血が通っているのかと思うくらい白い首筋に口付けた。





途端に口の中に広がる錆び付いた鉄の味に、一瞬遅れて零れたため息のような小さな彼の声。



そして、まるで安い香水のように微かに匂う硝煙。





この世界には彼に優しいモノは何処にも無いのだと突き付けられたような気がして、柄にもなく泣きたくなった。


を知らない子ども


(主よ、どうか彼らに一欠片の を)



お題拝借 透徹




あとがき




初の遊戯王小説がこれって…とりあえず、苦い使途覇目指しました(本当かよ



補足説明で覇王と使徒は裏社会の人間で覇王はフリーの殺し屋で使徒は情報屋です。




愛を辞書の意味でしか知らない、或いは忘れた覇王と暴力じみた行動でしか愛の表した方を知らない使徒。








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